【寄稿】「着やすく」「着⼼地の良い」服を誰もが着られるように
studio fuku 廣瀬 和⼦さん パタンナー・社会福祉⼠
廣瀬さんは、パタンナーとして、「着やすく、着心地の良い普段着」を中心に、体に不⾃由さがある⽅の服づくりをしています。本記事では、オーダーメイドや既製品のリフォーム、オリジナル商品についてご寄稿いただきました。
服づくりでは相談から試作、完成までの丁寧なプロセスを通じて、日々の暮らしに寄り添う衣服を提案しています。また、一人の困りごとが他の誰かの助けになるようにとの考えから、服づくりの過程で得た知恵をインターネットで積極的に共有をしています。
江東区役所前の⼩さな仕事場で、パタンナーとして服作りをしています。
服は平⾯の布を縫い合わせて⽴体になるよう作られています。それが「着やすく」「着⼼地よく」あるためには、適切なパターン(設計図)と素材選びが必要です。服の素材や形は、着る⼈の体型や着る⽬的、⽬指す姿により異なります。お祝いの⽇に着る服とスポーツをする⽇に着る服が違うのがわかりやすい例でしょう。こうした条件に応じて服の設計をとりまとめるのがパタンナーの仕事です。ファッションにもいろいろな分野がありますが、私は「着⼼地のよい普段着」を中⼼に、体に不⾃由さがある⽅の⾐服をオーダーで作ったり、販売したりしています。

幼いころから、服作りと⾐服にまつわる課題が⾝近にありました。私には知的障害を持つ叔⺟がいます。彼⼥には1⽇に何度も着替えをするというこだわりがあるのですが、ときどき、意思をもって服を裏返しに着ます。けれども家族は「裏返しであること」が気になります。そこで、私の⺟は表も裏も楽しめるリバーシブルのスカートを作りました。これなら、品質表⽰タグや縫い代が⾒えないので、家族も全く気になりません。
この体験は、私に強い印象を残しました。裏返しに着ていることを「恥ずかしい」と思い「どうして表がわからないの」と叔⺟に着替えを促すことは⼼が痛むことでした。けれども、「⼯夫された服」があれば、そもそも「裏返し」という問題が起きない、と知りました。私は「モノづくり」のチカラと楽しさに魅了されました。このことが、後に「モノづくりに関わりたい」と考え、パタンナーを⽬指すきっかけになったと思います。
お客様からオーダーのご相談があると、「どんなことに困っているのか」「変えたいと気づいたきっかけは何か」「どんな場⾯で使うのか」といったことを教えていただきます。「どんな⾊や素材やスタイルが好きか」「それを着てどこへ出かけたいか」というご希望も伺います。会話のなかから、解決すべき課題を整理していきます。現状のまま変えずにおくことも、確認しておきます。
そうして、仕事場に戻り、どんな提案ができるか考えます。適切な材料を探したり、試作をしたりして、お客様の困りごとを解決できるデザインを探ります。試⾏錯誤をする時間が、服作りの⼀番苦しく、けれども⼀番楽しい時間です。
これはという試作が出来上がったら、お客様に試していただきます。すると私にも、お客様にも、想像通りだったこと、そうでないこと、新しい気づきがあります。それらを話し合い、最終的なデザインを決めます。最後に費⽤や素材を確認して、製作に⼊ります。
このようなやりとりから⽣まれた完成品をお客様が⾝につけた時、素敵な笑顔を⾒せてくださいます。そして、それを着て出かけて楽しかったとか、愛⽤しているなどという後⽇談を伺うと、やっと仕事を納めたという気持ちになります。お客様とともに課題に挑戦する機会を得られたこと、そこで⾃分の技術が役に⽴ったことをうれしく思う瞬間です。
さらに、こうして出来上がったオーダー品から、studio fukuのオリジナル製品が⽣まれ、オンライン販売を通じて、他の⽅に届きます。ひとりのお客様の「困りごと」と、それを解決しようとやりとりしてきたお客様との時間が、他の誰かの悩みを解決することにつながります。そんなときはとても誇らしく思い、その喜びをお客様と共有しています。
服は作られたモノですから、⾃分にとって着やすく、着⼼地よく、素敵なものに変えていくことができます。それはオーダーだけでなく、既製品のリフォームでも実現できます。これまでの活動のなかから、お客様からご了解をいただけたものについて、ご相談の経緯をインターネット上で公開しています。お客様の「困りごと」の状況やそれを解決するために⽣まれた知恵は、また別の誰かを助ける知恵になります。その知恵をひとつでも多く増やし、「服の困りごと」をなくしていきたいと思っています。
誰もが着やすい着⼼地の良いお気に⼊りの服を着て、楽しい時間を過ごせるよう、これからも求められることに向き合い、お客様とたくさんお話をしながら、服作りに取り組んでまいります。


