【寄稿】オリエール病と暮らしと衣類 〜家族から見た衣類の課題と願い〜

富田 公美さん 当事者の保護者

富田さんは、オリエール病のあるお子さんのお母さんです。お子さんは、オリエール病による骨の変形や左右差、痛み、器具をつけたことなどにより着られる服が限られていました。

富田さんは、これまで着られる服が限られているお子さんのために、服を工夫したり、デザイナーさんと下着を作ったりされてきました。

本記事では、オリエール病のこと、オリエール病による服の課題、工夫してきたこと、病院や服をつくる関係者などに期待することについてご寄稿いただきました。


小児病棟入院や学校生活での衣料品の課題を家族の視点からお伝えさせて頂きます。

私の長男はオリエール病という骨の疾患を持っており、全身の骨に良性腫瘍があります。2歳の時、足の長さの左右差に気づき、オリエール病の診断を受けました。

小学1年生から、さまざまな身体の部位の手術を受け、現在(小学5年生)まで5回の手術入院を繰り返しています。手術は骨延長、骨の変形矯正、血管腫の除去、軟骨腫瘍をかき出す手術などいろいろですが、治療は対処療法のみなので今後も手術は継続されます。

オリエール病(多発性内軟骨腫症)とは?

多発性内軟骨腫症は、良性腫瘍である内軟骨腫が全身の骨に多発する疾患です。身体の軟骨部分に内軟骨腫瘍ができることで、骨の先端にある成長軟骨板の発育が妨げられ、変形や短縮といった成長障害が起こります。血管腫を伴うものはMaffucci(マフッチ)症候群と呼ばれます。

多発性内軟骨腫症は身体の片側に腫瘍が多発することが多いですが、両側性あるいは交叉性の場合もあります。骨の先端から、モヤがかかったように見える部分が全て腫瘍です。このように、骨の変形や長さの左右差が出たりします。

腫瘍の影響により、骨の先端から、モヤがかかったように見える右肩のレントゲン写真
骨の変形や長さに左右差が出ている両足のレントゲン写真

 

私達が感じる衣類の課題

▪️その1 身体に合う衣料品が少ないこと

当然ですが、市販の衣料品は選び方が難しいです。長男は、腕、足の長さが短いことから、特に冬物選びは難しく、衣類を選ぶ際は身体に合わせやすい衣類であることが第一優先。ジャージ系素材は長さ調整しやすいのでよく選んでいます。「欲しいデザイン」ではなく、「着られるもの」という視点が中心になっています。

▪️その2 機能性を必要としている

手指の腫瘍が肥大化している様子

手指の腫瘍が肥大化している様子

足に骨を補強するための複数の金属プレートが入っているレントゲン写真

足に複数の金属が入っているレントゲン写真

例えば軟骨腫瘍が肥大化した箇所や、身体に金属が入っている部分などは小さな衝撃でも痛みます。その対策として手袋やサポーターなどいろいろ試しました。

足に骨を補強するための金属プレートを入れていた時期は、防寒用の分厚いズボンが一番使い勝手がよく、ずっと着用していました。6月という暑い時期も、真冬用のズボンを履いて登校していたので、周囲からは「暑いのにどうして?」という声をかけられるようになりました。やはり、防寒用の機能をクッション性という機能目的で使っていることは、外見からは伝わらないので、そう思われるのも仕方ない部分があります。

衣類の快適性のためには、温度調整よりも、まずは痛みの緩和が重要です。痛みの緩和を無視して、衣類の快適性は作れないのです。

このような機能性衣類が必要だということを周囲に理解してもらいにくいという点にも課題を感じています。人と違う機能性を求めるということは「困っていることがある」ということになります。

その問題を周囲と共有できれば、問題解決への新しい糸口が見つかるかもしれないと考えるからです。なので、今後も積極的にこちらから伝えていく努力が必要だと思っています。

最近、母である私がほしいと考えているものは、防炎・難燃などの熱や火に対する機能です。小学校5年生になれば、調理実習、林間学校の活動など学校生活でも火を使った作業もあります。しかし、長男は両手を上げても頭ぐらいの長さしかありません。この手の長さでは、火からの距離を保てないという問題を感じています。ですので、防炎・難燃・耐熱などの機能性衣類を日常で気軽に使えたらいいなと思うようになりました。

▪️その3 衣類の情報共有・相談をする場が少ない

私は当初、入院中のことは病院でなんでも相談できると思っていたのですが、病院ではレンタルで対応できるようなもの以外、衣類の情報共有はほぼされていません。それは術後の入院生活で必要なものであっても同じで、少し規格外になってしまうと、情報収集も衣類の準備も大変です。

例えば、長男が小学3年生の時、骨延長手術で足の骨を切り、創外固定具を付けた時のことです。

このような器具をつけると、普通の下着やズボンは履けません。

創外固定具を付けた左足の写真

創外固定具の様子

手術入院前に病院で下着について相談した所、オムツでいいと言われました。ですがオムツだとテープ式しか使えない上、着心地も悪いです。また骨延長の期間が数ヶ月かかる中で、ずっとオムツではQOLも低下します。さらに自分で排泄可能な人間がオムツで過ごすということ自体も大きなストレスにつながります。

横側にボタンを付ける改良を施した5枚のパンツ
パンツの留め具として使用したボタン部分の写真
横側を改良したパンツを履いている様子

入院時に製作した下着

このため、私たちは下着を製作することにしました。友人に紹介頂いたデザイナーさんに、どんな下着がいいか、デザインや柄などについてヒアリングをしてもらったのですが、長男にとっての優先順位1位は、着心地でした(やはり機能性重視でした)。

長男は小さいころから、皮膚に触れるものに対して過敏な特性を持っています。そこで、ボタン部分の生地はオーガニックコットンを使用し、ボタンはプラスチック製にすることで、金属やマジックテープよりも肌へのあたりが柔らかくなるように考えて頂きました。また、子どもでも留めやすいように、大きめのプラスチックボタンが使われています。

このような発想は、衣類の素人である私一人では考えつかないアイデアであり、プロに相談する価値や、相談場所の大切さを改めて感じた出来事でした。

▪️病院に情報共有の場所を

小児病棟ではそれぞれのご家族が工夫して衣類を製作されています。でもそれらが共有される場はありません。だからこそ、病気や治療の種類を超えて、衣類の情報共有ができる場が病院にあったらと思います。

衣類加工は、個人でできることもありますが、個人では経験値の差から、解決するための発想自体が生まれないことも多く、また何をどこに相談したらよいのか分からない人も多いと思います。

装具士さんが病院に在中し、装具の製作や加工の相談ができるように、衣料品に関する相談や加工発注ができるような窓口が病院内にあればうれしいですね。

つまるところ、衣類は、治療の延長線上にある重要なパーツとなります。そして自分の身体にピッタリのサイズや好みのデザインの衣服を身にまとうことは、自信や活力を与えてくれ、メンタル面からも治療の大きな助けになると思います。今後、誰もが衣類の相談や購入が行いやすい環境が整えられるよう、切に願っています。