目次 兼 講演概要(レジメ)紹介

開会挨拶(カシオ科学財団の第14回研究協賛事業の助成を受けて今年1月から共同研究がスタートしたこと、金城学院ファション工房で開催したファッションショーを紹介した。)

趣旨説明、他 本シンポジウムの開催趣旨説明と情報共有のためのウエブサイトの作成協力をお願いした。

全盲にもかかわらず、自分で綺麗にお化粧ができます。そして、トロンボーンソリストとして、日本ケアメイク協会理事長としても活躍されています。綺麗にお化粧できると服もオシャレしたくなると思いますと言われ、山岸氏の服の購入法・管理の仕方、現状と今後に期待することを話された。

オリエール病のお子さんがおり、オリエール病の説明と、衣服を取り巻く課題として身体にあう衣料品が少ないこと、機能性のある衣服が必要なこと、衣類の情報共有する場が少ないことを述べ、個性のある体に合うファッショナブルな衣類は自信を与えてくれると思うと述べられた。

複数の実例紹介を通して、服が心を少しずつ開くきっかけになった例、本人の努力もあるが金メダルを取れた例などを紹介し、どんな小さなことでもいいので声をかけてほしい、連絡をとりあってやっていきたいと声をかけられた。

衣服のおしゃれと着脱性を両立させる修正方法が既製服のパターンに反映され、誰もが着られる服ができることを期待し研究したことと、今後の課題として衣服の相談窓口を挙げた。

「共用品」および「星川氏と共用品のつながり」を紹介し、おしゃれな共用品や、星川氏の思うおしゃれ、幅広い視点で考えさせられる事例をたくさん述べられた。

山野美容芸術短期大学で取り組まれている美容福祉、ジェロントロジー、美齢学の定義やその教育・実践例、装いの効果、日本美容福祉学会開催の紹介をされた。

服に困る本人が一番のデザイナーとの信念で活動をされてきて、NPOを立上げ、障害のある人を対象に開催したアダプティブファッションデザインスクール、他の取組を紹介された。

障害や病気のある多くの人が服の選択肢が少ない悩みがあることを知り、着たい服を着られることが理想ではないかと始めたお直しをする新サービス、様々な賞を受賞したキヤスクの紹介と今後について紹介された。

課題の一部の解決ではなく、仕組みで解決することを考え、国内外の社会問題を解決しようと様々な取組をし、海外のデザイン、ファッションの賞を受賞。その仕組みや現状、今後について介された。

感覚過敏の説明と感覚過敏の課題解決のため起業した感覚過敏研究所の業務、アパレルブランド KANKAKU FACTORYや服以外の開発について紹介された。

会場2チームが、情報交換した内容を2分程で発表した。

閉会挨拶 情報共有することが次のステップへのつながりと思いました。

URL のアクセス日 2024/01/09
もし、間違いなどにお気づきの場合、ご一報いただけると幸いです。
概要(レジメ)作成の文責 国立障害者リハビリテーションセンター 研究所顧問 小野栄一

平林由果(ひらばやし ゆか)

金城学院大学 生活環境学部 環境デザイン学科教授

研究班の代表であり、2009年に金城学院ファッション工房を立ち上げ、高齢や障害でおしゃれを諦めている方のために衣服支援をしている1

概要(レジメ)

オンライン参加者を含めて百名余りの方のご参加があり大変うれしい。本シンポジウムは、カシオ科学財団の第14回研究協賛事業の助成を受けて今年1月から共同研究がスタートした。研究の一環で金城学院ファッション工房では9月7日に「Fashion for Allを目指して ~着たい服で輝く~」と題してファッションショーと衣装展示、そしてワークショップを実施した。そのファッションショーの衣装ができるまでの過程を含めてその取り組みを動画でご紹介した。

【ビデオの内容】

衣服作製の過程の一端がわかるような当事者と衣服作製者の会話と様子が映り、最後にファションショーの模様が紹介された。

1.よだれ対策のため、Yシャツの袖を利用したよだれ除け(裏がタオル地)で、マジックテープで取り外し可能、2.肢体不自由で寝た状態でも衣服の着脱がしやすいように1枚布に全開できるズボン、3.足に付けた装具が完全に隠れるようなズボン、4.ハーフパンツにスカート布を取り付けたパンツスカート、5.変形した関節がみえないようにオーガンジーで2重に作製したドレスの袖などがファッションショーで紹介された。

ビデオ中、オリエール病の男性が、自分の病気の特性にあった「子供達の服」の選択肢が広がる社会、「多様な服」が取り入れられるような社会になればいいなと述べ、平林教授がファッションの力っていうのはすごく感じていて、着る人の気持ちを明るくして元気にするものだと思うと最後に述べている。

ファッション工房は、少し工夫することで楽に着脱できることをもっと多くの方に知ってもらい、誰もがおしゃれを楽しめるようになることを心から願っている。

参考・URL

  1. 金城学院ファション工房
    https://www.kinjo-u.ac.jp/ja/about/facility/f-kobo/

本シンポジウムの開催趣旨・ウェブ紹介と作成協力のお願い

小野 栄一(おの えいいち)

国立障害者リハビリテーションセンター 研究所顧問

4半世紀、加齢や障害などに配慮した衣服にかかわっている。2011年国立障害者リハビリテーションセンターに専任となり、2011年に国リハコレクション1を看護部と一緒に始めた。

概要(レジメ)

国リハコレクションでファッションショーや展示をやっていて、諸事情で障害に配慮したおしゃれな衣服等の販売を中止する参加企業があり、多くの方々の尽力にもかかわらず、必ずしもあまり世の中に広まっていないのではないかとの懸念があった。同時に平林先生や、大野先生が長年この分野の活動をされていて、どうやったら普及するのかと課題を抱えていたことから、様々な立場の方のなるべくお話を聞いて、普及促進の参考となるようにとシンポジウムを企画した。

情報共有のためのウエブサイトの骨格を紹介予定であったが間に合わなかったので、別な機会にメールなどで紹介する。ウエブサイトにどのような情報が掲載されると参考になるか、様々なアドバイスまたは掲載情報の提供など、差しさわりない範囲で今後ご協力をお願したい。

ウエブサイト2の内容を可能な範囲で徐々に充実することが、皆さんの参考になり、必要な服がどこでも手に入りやすくなる環境促進の一助につながることを願う。

参考・URL

  1. 国リハコレクション
    https://www.rehab.go.jp/ri/eventj/fashion-new/2023/
  2. ファッションのインクルーシブデザインを目指した情報共有サイト
    https://yasashii-fashion.jp

当事者・家族の立場から困ったこと、工夫したこと、解決してほしい課題など

視覚障害者の服装選び

講師紹介

山岸加奈子(やまぎし かなこ)氏
鈴木加奈子としてトロンボーンソリスト、音楽教室講師、一般社団法人日本ケアメイク協会1/ 理事長

昔は弱視で、色も形も見ることができていたが、大学卒業後から少しずつ見えにくくなり、現在は全盲で、盲導犬と外出をしている。

2016年に視覚障害者の化粧法を学び、化粧は見た目だけでなく心も変えてくれるものだということに感動した。

概要(レジメ)
1.はじめに

視覚障害者が自力でお化粧をするという技法「ブラインドメイク」を広める活動をしている。

自力でお化粧すると、自己肯定感が高まり、いろいろな人に会いたい気持ちにさせてくれ、お化粧が綺麗にできるようになると、髪の毛や、服装まで気を配るようになってくると思う。

以下、視覚障害当事者の私の立場でのお話で、一例として話す。

2.洋服の選び方

洋服は、お店で買う。私に似合うスタイルを知り、はっきり評価してくれる母とトレンドや着られそうな服をまとめ買いすることが多い。

3.洋服の管理
  • 手持ちの洋服は手触りの違いで、この肌触りはこの色だなと大体は記憶する。
  • 色を教えてくれる機械を洋服に当て色を知る。
  • 柄の有無は画像を細かく説明してくれるスマートフォンのアプリケーションを使うこともある。
  • ものタグ2を洋服に縫いつけ、洋服の柄などの説明を自分の声やテキストで入力をしておき、それを機械で読ませるものもある。

それぞれに皆さん工夫して管理している。

4.現状や大事なこと
  • 昔は見えていた人や、生まれつきに見えない人、それぞれ、色の認識は違う。
  • 生まれつきに見えない人は、服のイメージなど、周りの人の意見が大きい。
  • 女性の場合、ワンピースは、コーディネートが楽なので、ワンピースを好んで着用する人がいる。
  • 無地のみとか、パンツは必ず黒で、上だけは柄物とかいろいろな色にする人がいる。
  • 失敗を恐れて、特定のものしか買わない人がいる。
  • 靴下が同じ形で左右違った色を履くこと、急いでいて裏返しで着てしまうことが稀にある。
  • 白いシャツで、透けやすい洋服は、下着が透けないようにタンクトップを一緒に合わせてハンガーにかけておく。
  • 自分に似合うか否かは、お店の店員さん、信用できる友達や親などにしっかり伝えてもらうことが大事。
  • シミや色落ち、靴下の色違いや裏返しなどに気づいた時は、さりげなく伝えることをお願いしたい。
5.これから期待すること

できたらアプリケーションが自分の持っている洋服を管理してくれて、コーディネートを提案してくれる視覚障害者でも使いやすいアプリケーションがもっと開発されたら、さらに洋服選びの楽しみができると思う。

参考・URL
  1. 一般社団法人日本ケアメイク協会
    https://caremake.jp/
  2. ものタグ
    http://www.connectdot.jp/mono-Tag/

患者と家族から見た子供衣類の課題 オリエール病と共に生きる家族の視点

講師紹介

富田公美(とみた くみ)氏
多発性内軟骨腫症(オリエール病)のお子様の母親

母親の視点から見た日常生活および治療と衣服の関係、支援学級や小児病棟の母親間での情報交換から見えてきた課題を紹介する。

概要(レジメ)
1.お子さんのプロフィール

現在、小学5年生。2歳の時に足の長さの違いに気づき、オリエール病の診断を受けた。

小学校1年生から様々な部位の対処療法の手術を行い、五回の手術入院をしている。

2.オリエール病(多発性内軟骨腫症)

オリエール病は体の軟骨部分に良性腫瘍ができ、骨の先端にある成長軟骨盤の発育が妨げられ、変形や短縮の成長障害が起こり、体の片側に多発することが多い。内軟骨腫症1は小児慢性疾病に指定。

パラアスリートの成嶋徹2さんもオリエール病だが、骨延長の手術は受けていない。

この病気は対処療法のみで、治療の選択は人それぞれ。

全身ケアが必要で、複数の専門医にかかる必要もあり病院やドクターを選ぶ難しさがある。

3.本人と家族の立場から感じる衣服を取り巻く課題3つ

【課題1】身体に合う衣料品が少なさ

  • 衣類は、体に合わせられやすい衣類であることが第一優先になる。
  • 底上げの靴は、加工に適した靴があまりない。
  • 病院で色々な人に話を聞くと海外から靴を取り寄せる人も少なくない。

【課題2】機能性が必要

  • 軟骨腫瘍量が肥大化した指や体に金属が入っている箇所は、軽い衝撃でもすごく強い痛みを感じる。
  • 足の金属が入っている時期は真冬の防寒用の分厚いズボンをクッション性という機能目的で使い、暑い時期にも履いて登校した。
  • お子さんは腕が短く、火からの距離をあまり保てないので、調理実習など子供でも気軽に使える防炎や難燃耐熱の機能衣類を必要。
  • 小児病棟で、多くの家族が衣服を加工して持参していた。

【課題3】衣類の情報共有をする場が少ない

  • 2023年に足の骨を6センチ延長するため、足の骨を切って足に固定具を数ヶ月つけた。
  • 普通の下着やズボンを履けないので、ボタン付きの下着を着心地を優先して製作した。
  • 皮膚が過敏なため、ボタン部分の生地はオーガニックコットン、ボタンはプラスチック製にし、肌への当たりを柔らかく、大きなボタンで止めやすくした。
  • 当時、介護用の大人用のボタン付き下着はあるが、子供用はなく、友人が同じように困っている人の加工下着の販売を始めた。
  • 衣類に関する相談、加工できる場が、病院にもあるとよい。
4.まとめ

デザインは用の美となるので、個性のある体に合う衣類という用を突き詰めることこそ最高にファッショナブルになって一番自信を与えてくれるのではないかと思う。

参考・URL
  1. 内軟骨腫症
    https://www.shouman.jp/disease/details/15_02_009/
  2. 成嶋徹さん
    https://torunarushima.com/

企業の立場から 何故始めたか、どんな課題があるかなど

実例紹介を通じて

講師紹介

中澤幸子(なかざわ さちこ)氏
株式会社SACHI 代表取締役

おば様の影響で洋服作りに興味を持たれて、服飾専門学校に進み立体裁断やデザイン画の知識などを学び、大手アパレルメーカーに就職。その後、様々な経験を積み1、ご縁があり、マジックミシンの加盟店のオーナーになられ、(株)リフォームスタジオの「ユニバーサルセミナー」をされたりした。現在、オーダー・リメイク・ユニバーサルファッションを得意とする「アトリエ・クチュリエール東急プラザ渋谷店2」を含む4店舗を運営している。

概要(レジメ)
1.はじめに

リフォームスタジオの加盟店として、お直し、リメイク、オーダー、それからインクルーシブデザインを手がけている。このシンポジウムに参加した理由は、洋服に関する悩みに対応して洋服のお直しや作製していることを少しでも知ってもらい、洋服の悩みをより多く聞けたらとの思いからである。

以下、経験した事例3点を豊富な写真付きで発表された。

2.(事例1)寝たまま着られる服

現役バリバリの医師がギランバレー症候群になり、全身麻痺し、その家族が毎日辛い言葉を聞き、何とかできないかと、洋服に関して問いかけられた。そこで、寝たまま全体が開く平らになる洋服(ベスト、シャツ、パンツがすべてファスナーで全開できる仕様)を考えた。その服を介護の方が着させたら、外に出たいと本人が言い、毎日散歩に出かけているうちに本人の心が変わっていった。さらに、本を執筆したいと言い始め、前向きに考えるようなったとのこと。そのうち、省庁から誘われて、今はオンラインで、たまに出社して頑張っている。

お洋服一つで、その人の第二の人生が始まったとご家族から伝え聞いた。その後、本人が普段も自由に好きな洋服を着たいと言われ、真っ平らになる洋服で、介護の方が着せてあげられるTシャツ(ファスナーで全開できる仕様)を作製されたとのこと。

これらの経験から、中澤さんは『服は心を少しずつ開くきっかけになる」ことを痛切に感じたとのこと。

3.(事例2)排泄時に配慮した車いす利用者のジーンズなど

お母さまと一緒に小学校の低学年位で車いす利用のお子さんがいらした。

親御さんがある程度介護しているが、いよいよ自分でトイレの行動をしなければならないので何とかなりませんか?と相談を受けた。お母さまからの意見を聞きながらジーンズを色々試行していたら、お子さんがふと、「下着が見えるのがいやだ。」と言い出した。そこで、ジーンズのウエストを外してもジーンズがどこかに行かない、後ろの方に回ってしまわない工夫や、前から見たらジーンズの前のファスナーが普通のジーンズに見える工夫をした。成長期には、あまり変わっていない服を本人が望むので、そのような工夫をした。大学在学中に留学したいと、工夫したジーンズを持って一人でアメリカへ行き、何年かして一回りも二回りも人間が大きくなって帰ってきた。その後、社会人の制服をうまく直してあげて、今、社会人として頑張って働いている。

4.(事例3) 車いすの水泳選手の方のスエットパンツ

不慮の事故により車いす利用者となり、水泳をやり始めた人がいる。タイムを上げたいが、うまくいかず本人も考えていた。足の方の血液の循環も良くないと体が動かないことが分かり、車いすに乗って水泳場に行く間に冷えないようにしてほしいと言われた。この方から自分の好きなスポーツウェア(切り替えが非常に多いパンツ)を何とかしてくださいと頼まれました。

膝の表には保温性を考慮してダウンの生地を貼り、裏には肌触りが良いようにフリース生地を貼るなどいろいろ工夫したら、血液の循環が非常に良くなり、タイムアップできるようになった。

そしたら日本新に挑戦し、日本新を取った。本人の努力はもちろんあると思うが、「中澤さん、金メダル僕取れたよ。あのパンツのおかげでウォーミングアップがスムーズにいくようになったんだ。」と、満面の笑顔で報告に来てくれた。

ちょっとしたきっかけによって本人の気持ちを前向きにさせてくれる洋服。中澤さんはこのようなことに携わるということが如何に大切か、事例を通じて感じることができるようになったとのこと。

5.最後に

ちょっとしたことで本人の気持ちが変わる。その方のお話をじっくり聞いてあげて、心を少しずつ、開かせてあげて、それで前に向かせてあげる。そんな関係ができると中澤さんは非常に嬉しいなと思う。

このような形で進めているので、皆さんのいろいろなお話を聞いたり、御病気のことも聞かせていただいたり、どんな小さなことでもいいので、ご連絡取り合ってやっていきたいと思っているとのこと。

参考・URL
  1. 今まで培ってきた知識や技術を若いスタッフへ伝え、お直し技術者の社会的地位向上をめざす!
    https://www.talent-book.jp/reform-s/stories/53464
  2. アトリエ・クチュリエールについて
    https://www.magicmachine-rs.com/atelier-couturiere/

研究者の立場から 何故始めたか、どんな課題があるかなど

講師紹介

雙田珠己(そうだ たまみ)氏
元熊本大学教授

大学で被服学をご担当され、運動機能に障害のある人の衣服、衣生活を研究テーマとした。いつまでも自分らしく装い、できるだけ一人で着脱ができることを目指し、障害の状況に適応したおしゃれで着脱しやすい修正方法を検討され、特別支援学校の衣生活分野のプログラムの立案や講習会など多方面で活動された。近年は、地域で衣服の相談窓口を開いている。

概要(レジメ)

1.はじめに

障害がある方の衣服と衣生活について、25年くらい関わっている。

「なぜこの研究を始めたか」と「課題」の二点について話す。

2.なぜこの研究を始めたか

「障害のある人の衣服=介護服=機能に特化した服」の考えが腑に落ちなかった。

当時、既製服を直す方法や研究は国内外問わず多くあった。調査したら、運動機能障害がある人の多くが既製服で賄っており、ほぼ全員が着脱の時に不具合を感じていた。

そこで、体に合わせて衣服を直す効果が広く知られれば、直す人が増えると思った。「オシャレと着脱性」を両立させる修正方法が既製服のパターンに反映され、誰もが着られるインクルーシブな服が出来ることを期待し研究を始めた。

研究の進め方は衣料と医療の連携を基本とした。

  • リハビリの専門家と一緒に着用者の体の状態を知って、着脱動作の特徴を把握
  • 着用者の希望に沿った外観デザインを損なわずに機能性に優れた修正方法の検討
  • 修正を加えた衣服を着た際の生理的負担(心拍数、血圧、動作、筋電図)を計測して修正効果を検証

それらの成果を地域の福祉機器展や肢体不自由特別支援学校や文化祭で公開した。

また、支援学校の先生とともに、将来生徒たちが衣生活で自立することを目指した授業に取り組んだ。

3.今後の課題

「おしゃれと着やすさは両立できること」があまり知られていない。

退職後は地元でコミュニティサロンの運営に関わり、衣服の相談窓口を開いた。しかし、半年経っても、ほとんど相談がなく、「着やすくおしゃれな服に直しましょう」というテーマで作品展示や体験コーナーのイベントを行った。多くの人が来られ、その後、リハビリ病院で勉強会などを手伝い、月1件ほど相談を受けるようになった。

その結果、高齢者と障害のある人は、お店で補修や補正について注文できない人や一人でお店にいけない人が多いこと、地域には有償または無償で衣服を直すボランティア団体があること、介護保険のサービスにも衣服の補修はあるが、他のサービスを優先するため利用できない人が多いことがわかった。そしてサービスを本人につなげる場所のないことが一番の問題だと気づいた。

たとえば病院や高齢者施設、誰もが足を運べる市役所などで定期的に相談ができるとよい。小さなモデルでよいから始めることが大切だと考え、今はグループで衣服の相談窓口を開いている。一緒にやりたいと思う人は、お声がけください。

公益法人・大学の取組

共用品とおしゃれについて

講師紹介

星川安之(ほしかわ やすゆき)氏
公益財団法人 共用品推進機構/ 専務理事

学生時代、ボランティア先の重度重複障害児の通所施設の職員の方の「ここの脳性麻痺のある子ども達が遊べる市販のおもちゃが少ない」という声を聞き、おもちゃメーカーのトミー工業株式会社、現在のタカラトミーに就職され、視覚障害児専用のおもちゃの開発、共遊玩具の研究・開発に携わった。今では誰もが使えるように、日本産業規格いわゆるJIS や国際比較のISO に関する事務局でも活躍されており、著書も多数ある。

衣服に限定せずに広くおしゃれの視点について、多数の写真・図で説明された。ユーモアがあり、ご講演でも、その片鱗が伺えた。

概要(レジメ)
1.共用品の紹介

障害がある人、高齢者しか使わない福祉用具、障害がある人が結果的に使えない一般製品。

現在、多くの人々が共に利用しやすいもの【共用品】がかなり増え、市場規模は三兆円位。

福祉用具から共用品へ:温水洗浄便座。もともと痔や手の不自由な人のために開発された。

一般製品から共用品へ:多々ある。シャンプーとリンスの容器の中身が目をつぶってもわかるように、シャンプー側にギザギザをつけられている。

2.おしゃれとは

広辞苑:1955年は「身なりを飾ること」、1993年は「身なりや化粧を気のきいたものにつとめること、また、つとめる人」

エレベーターの鏡:車椅子の人が後ろに人がいないか確認のため鏡があるが、多くの人は化粧チェックしている。

3.私と共用品

学生の頃、障害児施設の人にここに通ってきている脳性麻痺のある子供が使えるおもちゃが少ないと聞き、おもちゃメーカーに入社した。

円高不況で共遊玩具という一緒に遊べるものを作り始めた。それを玩具業界全体がやり始め、他の業界も一緒にやり始めた。八年で仲間が400人位、会社の数は300社位になり、当初、仕事でなかったが、1999年から財団法人共用品推進機構1とした。

障害当事者団体と連携し16個の日常生活における不便さ調査を行い無料公開。各課題で検討した。例えば、ピーピーという注意喚起の音が高齢者は2500ヘルツ以下でないと聞こえないとわかり、規格が作られた。

4.規格と普及促進

経済産業省の勧めで、1998年にISOにガイドの提案(ISO/IEC Guide71、規格を作る参考書がガイド)をし、ガイドに沿って48のJIS規格、35の国際規格になった。ボタンや洋服に関する規格もある。

規格のみでは足りない。靴や洋服などは一人一人違う。

徳武産業(株)の靴、あゆみシューズ。左右の足のサイズの違う人、足の長さが違う人など、個人に合わせ半オーダーメイド的にできる。

国際福祉機器展で、「高齢者に優しいもの展」を二年間やったがほとんど人が来なかった。「片手で使えるモノ展」とコーナー名を変えたところ、一番人気のあるコーナーに変わった。

北海道の(株)特殊衣料が、てんかんと気づかないデザインのてんかん用帽子を作製。北海道は、冬凍結して転ぶ人が多いので、一般の人にも売れている。

フットマーク株式会社が大人のおむつカバーを依頼され作製。広辞苑で介助と看護という言葉を見て、介護という言葉を創った、介護用オムツと命名した。洒落てると思う。

5.私が思うおしゃれとは

選択できる
違いを無理なく認め合う
他人が(も)いい気持ちに楽しめる
自分が(も)楽しめる

【例1】

銀座で展示会(バリアフリーは銀座から)を主催した1997年、そのイベントめがけて、数多くの障害がある人が多く来ると、銀座界隈の約100軒の飲食店に、事前にそのイベントのことを話した。

高級店で入り口が階段しかなく、無理だろうと思ったら無理だった。

隣のピザ屋は同様な作りで、無理だろうと思ったら、「自分たちが車椅子の人が来たら運びますから」と受入れを了解してくれた。

【例2】

スーパーやコンビニで、車椅子の人は棚上のペットボトルが取れない。簡単におしゃれに変え、東京オリンピック・パラリンピックの選手村で実践。縦の列を全部同じものにし、背の高い人でも、車椅子の人でも取れる。

【例3】

フットマークの会社が作った水泳帽子で、動物の帽子2。水が怖い子どもたちの周りの大人や子供がかぶって、「見て、水怖くないよ」と伝える帽子として作製した。

参考・URL
  1. 公益財団法人 共用品推進機構
    https://www.kyoyohin.org/ja/index.php
  2. 動物の付いた水泳帽子
    https://www.footmark.co.jp/product/i-202117/

美容福祉と美齢学

講師紹介

大野淑子(おおの よしこ)氏
山野美容芸術短期大学 客員教授

日本女子大学をご卒業後、アパレル業界に十年ほど勤務され、その後山野美容芸術短期大学で教鞭をとられて20 年余り、教育活動の傍ら、高齢者や障害のある方々の美容、装いの支援、そして実践活動に関わっている。

概要(レジメ)
1.はじめに

山野学苑の山野美容芸術短期大学は、美容家の山野愛子が美容の高等教育機関として1992年に創設した大学。姉妹校の山野美容専門学校とともに、美容福祉、ジェロントロジー、美齢学の教育や実践、研究をおこなってきた。

2.美容福祉

1999年から美容福祉の教育開始。

美容福祉とは、高齢者や障がいのある方々の豊かな人生を美容でサポートすること、高齢になっても障害を持ってもおしゃれをあきらめない支援をすること。現在、この考えは理解されるが、当時は違った。

学生だけでなく美容師向けにも美容福祉講習会で、福祉美容師の育成を継続。

3.ジェロントロジー

2011年からジェロントロジーを教育に導入。

ジェロントロジーは、加齢による変化を様々な角度から研究する学問。加齢学や老年学とも呼び、アメリカやヨーロッパの大学で始まり、日本では複数の大学が導入。

医療や福祉と考えがちだが、あらゆるジャンル、経済、社会、教育、美容など様々な分野から学際的に捉える学問。

4.美齢学

2016年から、美齢学を使用開始。

基本的に美容福祉と同じ考えだが、ターゲットが広い。

以前は高齢者のターゲットが二割、今は元気な八割も含め、包括的な意味で美齢学を使用。

5.山野学苑で扱う美齢学、美容福祉

ヘアカット、シャンプー、スキンケア、メイク、ネイルケア、ハンドケア、フットケア(足爪ケア)、アロマテラビー、ファッションなど
※高齢で理由不明で歩けなかった人が、足爪ケアによって歩けるようになった例がある
※ファッションは、美容福祉や美齢学においても非常に重要

6.美容福祉や美齢学の教育・実践例
  • 訪問理美容:介護、病気や育児などで理美容室に行けない人の自宅や施設などで美容を提供する。
  • 化粧療法:化粧の心理的効果を利用。加齢や病気に悩む人の支援や問題解決をする。
  • アピアランスケア:外見の苦痛に関するケア。
    女性は内面の痛みよりも外見の変化が嫌というアンケート結果がある。苦痛軽減のためウィッグ、メイクなどが重要。がん対策基本推進計画1で、昨年より補正下着の補助金が出る。
  • ユニバーサルファッション: 年齢やサイズ、体型、障がいなどに関わりなく誰もがファッションを楽しめる社会の創造
  • 車椅子の着付け2:車椅子利用者に着物をリフォームせずに着せる方法。「ユニバーサルきもの着付師」の資格認定。
7.美容福祉や美齢学の視点で装いの効果

人は装いによって気分の高揚、自信の向上、不安の低減などで、積極的な行動になる。高齢や障害があってもおしゃれを諦めない環境やサポートがあれば、活発な生活ができる。

8.ご紹介

日本美容福祉学会3開催の紹介。参加無料。ケアとしての美容特化型デイサービスの話やアピアランスの話などがある。

参考・URL
  1. がん対策推進基本計画の見直しのポイント
    https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/001127422.pdf
  2. 車椅子利用者への着物着付けの普及活動
    https://www.yamano.ac.jp/outline/social/wheelchair.html
  3. 日本美容福祉学会
    https://bwgakkai.gr.jp/

人材育成の取組

身体障害者のファッション教育の取組み

講師紹介

鈴木 綾(すずき あや)氏
NPO 法人エスプリローブ 代表理事

2011 年にファッションブランド、アトリエ エスプリローブを開業、当初からファッション教育、ソーイング教室、パターン教室、デザイナー育成講座などを行っていた。車椅子でお買い物ツアーというイベントはじめファッションショーやワークショップなど様々なイベントも開催していた。

現在は、文化服装学院連鎖校の香蘭ファッションデザイン専門学校に勤務の傍ら、NPO 法人エスプリローブ1の運営、アトリエエスプリローブの顧客のためのオーダーメイドを継続している。

概要(レジメ)
1.身体障害者のファッション教育に取り組むきっかけ

2011年個人事業としてアトリエ エスプリローブを創業、体に障害のある方の衣服を作っていた。障害のある方々が町に出るきっかけとなるファッションイベントも開催していた。その際、デザイナーになりたい、自分で服を作りたいと言われることがあった。

創業時から服に困る本人が一番のデザイナーと思い、服作りのサポートを行った。しかし、縫えない人もいるので、デザイナー希望者にデザイナー育成講座を開催していた。

個人で服の製造、販売の他にさまざまなイベント活動を行うことは、体力の限界があり、2020年人材育成をするNPO法人を作った。

2.アダプティブファッションデザインスクール

日本財団の助成金で2021年に実施。体に障害のある人に本格的なファッション教育をするスクールで、個人面談で選出した19名にオンラインで実施した。参加者は20代から50代の女性でさまざまな障害のある人だった。

前半は基礎編で、特徴は身体障害や病気を持つ体の理解を深める授業とした。

後半は、自分でデザインした服の縫製指示書を書いてサンプルが出来上がる内容とした。

スクールの成果物は、各自が制作したマイブランドのウエブサイト1で見られる。

受講生と運営側講師陣は初めての取組で手探りであったが、最後は大きな感動があった。

3.第二期スクールの開講

日本財団の助成金で2022年に実施。

第一期受講生を対象にアパレルCADの授業を取り入れ、最後に自分でワンピースのパターンを引き、縫製を依頼して実物のワンピースを完成させた。

4.修了生のその後

岐阜県の佐藤さんは起業。授業で制作したワンピースを主軸に商品展開。

静岡県の小林さんは、分校として障害者のソーイングスクールを継続中。

5.その他の取り組み

九州ろうきんの助成金で、服飾の基礎学習を終えた人に、障害や病気のある方の体と心に向き合う衣服を学ぶ講座を開催。

香蘭ファッションデザイン専門学校で、障害や病気の体に適応するファッションについて、誰もが満足いく装いができる世界を作っていってもらいたいと願い、学生指導している。

今後、ファッション教育機関が重度の障害があっても、学びたい人が学べる環境づくりや働く環境づくりの実現を願っており、今後の課題としている。

参考・URL
  1. NPO 法人エスプリローブ
  2. アダプティブファッションデザインスクール受講生のマイブランド紹介サイト
    https://afs-brands.studio.site/?fbclid=IwAR3SzwzyWbChxbgL6d85bj_MJwVERxJxI5DraM3uYUrGmxk53RZWm6aFeu4

企業の取組

服のお直しサービス「キヤスク」の紹介

講師紹介

前田哲平(まえだ てっぺい)氏
株式会社コワードローブ 代表取締役

障害や病気のある人向けに既製服を着やすくお直しするサービス『キヤスク』1代表。ユニクロ在職中に800 人を超える当事者に服の悩みを聞き、その中で得た気づきや課題意識をもとに、2021 年に独立・起業、2022 年サービス開始。グッドデザイン賞ベスト100、ACC TOKYOCREATIVE AWARD グランプリ、SDGs 岩佐賞などを受賞2

概要(レジメ)
1.キヤスクとは

キヤスクとは、障害とか病気などの理由で、着たい服よりも着やすい服を優先せざるを得ない人に、着たいと思う既製服をその人の体に合わせて着やすくお直しをするオンラインサービスのこと。

2.自己紹介

20年間、ユニクロで働いた。在籍中、障害や病気のある人の服の悩みを知る機会があり、多くの人が服の選択肢が少ない悩みがあることを知り、解決をしたいと、ユニクロを退職してコワードローブを2021年に起業。一年間準備し、キヤスクのサービスを開始し、いろんな業界のメディアから取り上げられた。

3.キヤスクが解決したい課題

障害とか病気のある方の被服の選択肢の少なさを解決したい。

例1:筋緊張で、腕が曲がりにくく、気管切開で首元にチューブを装着した人。首回りの詰まった服やかぶりの服が着にくい。

例2:神経系の病気で指先が不自由な人。ボタン留めの服で好きな服が着にくい。

例3:足が不自由な人。硬い素材の丈の長いズボンが着にくい。

着やすい、着にくいと感じる点は、一人一人違う。全ての人の選択肢を同じにするためには、結果的に服を作るよりも一人一人の体に合わせて、お直しをする方法がいいのではないかと思い、キヤスクを創った。

4.キヤスクのサービス4つの特徴

【特徴1】体の不自由な人のニーズに特化したメニュー

例1:かぶりの服が着にくい人。着られるように前開きにして好きな服を体に合わせる。
例2:指先が不自由な人。着たいボタン留めの服のボタン留めをマジックテープにし、ボタンは疑似ボタンとして残す。
例3:足が不自由な人。ガバッと横を開き、寝たきりで履けるようにする。ただし元のデザインを変えないように直す。

【特徴2】依頼から受け取りまで全て自宅で完結できるサービス

お直しに対応するスタッフと個別にチャットルームで打合せ後、スタッフにお直しする服をヤマトの匿名配送で送り、お直しされた服がまた戻ってくるサービス。

【特徴3】お直しスタッフ(キャストと呼ぶ)

キャストの大半は、障害のあるお子様のお母さんなど、お客様の悩みを具体的に想像できる人。合計15名のキャストと技術的品質の担保のためアドバイザーがいる。

【特徴4】お直しした服を全て公開

世界に一着だけの服を全て公開。他の同様な悩みのある人にキヤスクを知ってもらい、サービスが不要の人には世の中に服の悩みがある人の存在を知ってもらえるように情報発信している。

5.これまでのサービス2年半の実績

注文件数は400件、お直し点数は1,000点超えた状態。まだ収益を上げられる状態ではない。リピート率が高く、お客様が満足しているので認知を拡大すれば、注文件数は広がると思う。

お客様の声:着やすくなった、着せやすくなった、好きな服を選べるようになった。
キャストの声:障害のある子どもと過ごしながら働けるので働きやすい、やりがいがある。
SNS:当事者団体、特別支援学校、リハビリ関係者、政府のインバウンド向けのSNSで紹介された。
メディア:多数掲載。ビジネスデザインの社会性や新規性が評価2され、様々な賞を受賞。

6.キヤスクのこれから

個人向けのキヤスクの運営ノウハウを法人向けにしたサービス「キヤスクtoB」を考えている。お直しサービスの代行のみでなく、商品開発やサービス開発の支援、事業計画やMD計画の立案・実行の支援など、ニーズに合わせた支援をする。

8月から、ファッションECモールのZOZOTOWNと「キヤスクwithZOZO」、ZOZOTOWN上で着やすい機能がついたインクルーシブウェアを受注販売できるサービスを始めた。アパレルブランドが開発の手間や在庫リスクを全く考えずに、着やすい洋服が販売可能になる。

今後、様々な企業・ブランドと協業しながら、「誰一人取り残さない」アパレル業界に作り上げたい。

必ず必要としている方がいるサービスと思うので、続けることが一番大事と思う。

参考・URL
  1. キヤスク
    https://kiyasuku.com/
  2. GOOD DESIGN AWARD グッドフォーカス賞(新ビジネスデザイン)、経済大臣賞/ACC グランプリ、IAUD 国際デザイン賞2022金賞、SDGs 岩佐賞など

インクルーシブファッション「SOLIT!」の紹介

講師紹介

田中美咲(たなか みさき)氏
社会活動家・ソーシャルデザイナー

SOLIT!は、日本で生まれ、日本・中国・イギリスを中心に活動するインクルーシブファッション企業です。2022 年には世界最高峰のデザインアワードiF DESIGN AWARD にてGoogleやApple と同等のデザインレベルであると評価され、最優秀賞を受賞。その後、カナダ・バンクーバーにて初の海外コレクションを実施。現在は、そのメソッドを国内外の大学や企業に提供し、多くの実践者を生み出すことに注力されている。

概要(レジメ)
1.自己紹介とSOLIT!について

会社の使命ミッションは多様な人も、動植物も地球環境も誰もどれも取り残さない社会に向けて経済圏を作り出すこと。

課題の一部の解決ではなく、仕組みで解決することを考え、国内外の社会問題を解決しようと社会人生活を過ごした。その結果、国内外のデザイン、ビジネス、ファッションなどに関する受賞1。最近、これから挑戦する人のため「非常識なやさしさをまとう」を出版し、論文を執筆中。

SOLIT!は日本、中国、イギリスに拠点があり、多くの自治体や企業の補助を受けて活動し、メンバーは多様で、スタッフ5名、プロフェッショナルのボランティア20名。ボランティア30名以上いる。

社会課題の当事者や何かの課題を経験したメンバーが多く、女性が80%以上、身体、精神・発達障害やLGBTQIA+当事者もおり、約30%以上が医療・福祉従事者で構成される。

2.今までの取組

SOLIT!は、海外の評価が高く、ポイントが2つある。

  1. 服のパターンは、服の部位ごとにサイズ・仕様・丈をカスタマイズ可能、体型や状態、表現をしたい表現に合わせて選択可能にした。受注生産・小ロット生産で環境配慮もしている。
    現時点で2000以上のカスタマイズが可能。リハビリテーション病院やファッションの専門学校と連携し、服のパーツのデザインを研究調査し情報提供している。ウエブサイトで完結するので、海外からの依頼や自宅や病院の中からオーダーをもらうことがある。
  2. 開発プロセスとして、多様な当事者とチームを作り意思決定する体制
    この会社の仕組み、インクルーシブファッションのデザインが評価され、2022年に世界最高峰のデザイン賞であるiF DESIGN AWARDで優勝1。福祉的要素のみでなくファッションとしても評価をされる努力をし、デンマークのグローバルファッションサミットのコンペティションで2023年の産業部門で優勝。
3.現在

着る人の思いや表現、自己実現なども含めたファッションの実現に注力している。

世界のファッションの課題として、1.美しさを固定する概念になっている、2.多様な人が包摂されておらず、選択肢が少ない、3.障害者の感動ポルノ化など、多様性の表象への偏りや不足などがある。これらの仕組み自体も解決したい。

日常的に感じるファッションに関する課題を抽出し、その課題を解決のためその課題を経験した当事者14名をモデルとして採用し、解決策としての服、多様なモデルがどのようにランウェイを歩くのかを構造的に設計した。例えば、

  1. スカートを履くことをジャッジされたくないという高校生にはスリーピースワンピースのカスタマイズ可能なセットアップを彼のために作製。
  2. ボディシェイミングと言われる体型を外から判断されたくないという当事者にはエクストラオーバーサイズのシャツワンピース。
  3. ジェンダーセクシャリティが日々変わる当事者にとって、パンツ単体、スカート単体はすごく億劫で苦しい気持ちになる。そこで彼女には360度アジャストできるスカートパンツを作製。
  4. 老いても美しく、意志強くありたいという彼女にはデモカードのドレスを作製。

そのファッションショーには約500名のファッション評論家やメディアの人が来て、VOUGEをはじめ、イタリア、メキシコ、韓国のトップクラスのメディアに掲載された。この取り組みの過程、プロセスを評価してもらうため、メディアに密着してもらいながらアウトプットしていった。

4.その後

SOLIT!は、四年をかけ、製品作り、表現作り、仕組み作りを創業から行なった。今後は、多くの実践者を増やすための活動をする。

  1. イギリスにあるウェストミニスター大学と連携して、取り組みのメソッド化と論文・教科書化をする。Stanford social Innovation Review(社会課題解決に挑む方向けの論文を集約したメディア)に論文掲載する。
  2. 障害者の活躍に関する国際イニシアチブのV500( Valuable 500バリアボファイブハンドレット)の日本カウンターパートになり、日本だけでなく海外に発信したり、海外で同じようなものを求めている人に、日本のソリューションに手が届くようにしたい。

もし何か気になることがあれば、いつでも連絡を頂きたい。

参考・URL
  1. https://solit-japan.com/

感覚過敏の課題解決アパレルブランドの事例紹介

講師紹介

加藤路瑛(かとう じえい)氏
感覚過敏研究所 所長

感覚過敏当事者であり感覚過敏の課題のために13 歳で感覚過敏研究所を立ち上げ、感覚過敏の啓発や大学との共同研究、対策商品の企画・販売などに取り組んでいる。感覚過敏の人のためのアパレルブランド「KANKAKU FACTORY(カンカクファクトリー)」の展開のほか、センサリールームやカームダウンスペースなど五感に優しい空間の企画などを行なっている。

今回、感覚過敏の課題解決を目指したアパレルブランド KANKAKU FACTORY の取り組みを紹介された。

概要(レジメ)
1.自己紹介

現在18歳。12歳の時に起業、株式会社クリスタルロードの代表取締役社長となり、2020年の1月、自分の困りごとでもある感覚過敏の課題解決を目指して、感覚過敏研究所を起業。

感覚過敏等の理由で、高校、大学は通信制を選択し、現在、早稲田大学で、障害学、心理学、ニューロサイエンスなどを勉強中。信州大学繊維学部.奈良女子大学、東京大学と共同研究したり、感覚特性のある子どもの支援方法に関する講演などの依頼を受けている。アパレル事業は今回初めて講演依頼を受け、嬉しく思う。感覚過敏に関しての著書が2冊1,2がある。

2.感覚過敏とは

感覚過敏とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの諸感覚が過敏で、日常生活に困難さを抱えている状態で、病気ではなく、緩和方法が発見されていない症状です。

感覚過敏の原因は、発達障害、うつ病、認知症、脳卒中、交通事故による脳へのダメージなど様々。

体調が悪くなる例:視覚過敏は蛍光灯やスマホの画面、嗅覚過敏は香水・食べ物の匂い、聴覚過敏は大きな音、騒ぐ音など。

選択肢が少ない例:味覚過敏は食べ物、触覚過敏は服(縫い目やタグが痛い)

3.感覚過敏研究所

感覚過敏の課題解決を目指し、「感覚過敏の啓発活動」、「感覚過敏に関する対策商品・サービスの企画・制作・販売」、「感覚過敏の研究」を実施。1ミリの安心から百kmの自由へというコンセプトで、五感に優しい空間作りに力を入れている。

1ミリ先の安心を目指し、感覚過敏課題解決アパレルブランド KANKAKU FACTORYを展開中。

加藤さんは、小学生の頃からオシャレ好きで、服は少し痛いものと思っていた。中学生になり、感覚過敏を知り、服は痛いと感じることが普通でないと気づいた。家では肌着とパンツで真冬も過ごす。一度、受け入れた下着以外、新しいモノが着られず、何年も着て穴の開いた肌着だった。自分で着られるタンクトップを作った。同じように特定の服を長く着ている人は、辛いと思いながら頑張って着ている。

4.アパレルブランド KANKAKU FACTORY

縫い目が外側、タグなしをコンセプトにしたブランドで、カームダウンパーカー3は他にも様々な対策をした。

  1. 縫い目は外側、内側段差を少なく。縫い目が触れると痛く、存在感を感じる
  2. タグなし。プリントは首元に触れない場所。プリントの方法によっては首元に触れて気になる
  3. 縫い目が外側でも見た目を美しく。福祉ファッションは福祉っぽくなりがちだが、「外側にした縫い目」をデザインとして楽しめる
  4. 感覚の刺激に疲れた際、情報遮断してクールダウンするためすっぽり被れる大きなフード
  5. マスクができない人が簡易マスクモード、マフラーが苦手な人が風をシャットダウンできるネックウォーマーみたいに使える
  6. フードにワイヤーを入れ、フードをかぶった時に頭や頬になるべく触れないように自由に調節可能
  7. リュックや鞄が肩に触れても痛くないように、肩のラインを少し後ろにし、脇下のサイドの縫い目の位置も少し後ろにして、表面が滑らかな生地を選択

コットンは人気だが毛羽立ちがあり、洗うと固くなるので、コットンベースとレーヨンベースのパーカーを作製。

小規模ブランドの悩みは、生産ロットが200枚位で単価が高くなること。カームダウンパーカーも20,000円台。価格落とすため量産も必要なので、販売や海外進出に協力可能な企業を紹介されると嬉しい。

Tシャツは、首元にプリント無し、外側に出した縫い目はパイピングテープでデザインしている。

5.カンコー学生服との共同開発

カンコー学生服の感覚過敏の人のための学生服プロジェクトを立ち上げ、Yシャツを作り、襟や袖の硬い部分を改善した。ケアラベルはポケットの中に入れ、気になる縫い目は折り伏せ縫いにしてフラットにした。さらに開発をして、2025年1月から販売予定。ブラウスも販売予定。

Yシャツはキッズデザイン賞を受賞。このYシャツで学校に行けた、卒業式などに出られたと連絡をいただいた。カームダウンパーカーを制服代わりにして登校できた人もいる。服一つで学校に行けなかった子供が行けることを知ってほしい。

6.開発状況

下着や靴下の研究開発中。特に小学校高学年の女子がブラジャーや、生理の時に下着がつけられなくて悩まれているので早めに解決したい。マンパワーも資金も足りない。一緒にやってくれる工場に出会えていない。協力いただける方がいたら、ぜひ連絡してほしい。

7.服以外の開発

街中の音や光、臭いの情報、カームダウンスポットの情報共有ができるセンサリーマップの開発中。

当研究所は、日本で唯一のカームダウンスペースの専門ストアとして、国内すべてのメーカーの商品を扱っている。設置場所の環境調整と運用面もサポートでき、カームダウンルームのアドバイザーや福祉施設で導入が広がっている照明スヌーズレンのアドバイザーもやっている。2024年12月からスヌーズレン機材も販売開始。

センサリーマップの開発・運営費のクラウドファンディング4に挑戦予定で、11月下旬位にスタート予定。センサリーマップ自体は12月末に完成予定で、クラウドファンディングの支援者の先行体験後、正式リリースしたい。

感覚過敏の解決には、着心地のいい服を作っても、外の世界の刺激が強ければ外出が辛いままなので、服、部屋、都市空間すべてを優しくする必要がある。

着心地が良くておしゃれな服を着て外に出て世界を楽しめる、そんな社会を目指している。

ぜひ私たちの挑戦を応援いただけると嬉しい。

参考・URL
  1. 感覚過敏の僕が感じる世界 日本実業出版社 2022年8月1日発行
    子どもの記憶が残っているうちに書いてほしいと言われ、ご自身の感覚世界を15歳の時書いた本
  2. カビンくんとドンマちゃん 感覚過敏と感覚鈍麻の感じ方 株式会社ワニブックス 2023年8月10日発行 感覚過敏と鈍麻のある中学生を主人公にした物語で学校での困りごとや小さな心の葛藤などを追体験できる本
  3. カームダウンパーカー(秋冬向け)
    https://kankakufactory.com/products/tyr-calmdawn-hoodie-heavy
  4. センサリ―マップ クラウドファンディング
    https://camp-fire.jp/projects/714268/preview

会場は、テーブルの配置を変えて、6チームに分かれて、10分少々賑やかに情報交換をし、2つのチームから話したことなどを手短に報告していただいた。

また、オンラインでも、2チームに振分けで、情報交換を試みた。

会場Aチームで話された話題は、以下のようなこと。

  • 感覚過敏は、同じ人でも強い時や弱い時があり、場面によっても違うから、ちゃんと話を聞きながら対応することが大事という話。
  • 着たいという気持ちは、高齢者はリハビリにつながるかも知れないが、子どもはその気持ちやニーズを育てることが大事ではないか。
  • 洋服を直して着られるようになると、いろいろな思いの中、障害のある子どもと向き合っている親は、その子の成長を実感できる。ファッションには、そのような力がある。

会場Bチームは、インクルーシブファッションに関して、皆さんのお仕事経歴を聞いた。

衣服の販売や作製の経験をされた人がいて、お話をうかがった。

地道な努力、継続が一番大切で、問題意識やキャッシュフローも重要と思った。

徳永千尋(とくなが ちひろ)

日本医療科学大学 名誉教授 作業療法士

どのお話にも何かしら課題があり、その課題を解決するため、努力を惜しまない。継続が大事。情報交換すること、情報を共有することが、次の大きなステップにつながっていくと思いました。

お集まりの方々、オンラインでご参加いただきました皆様方にお礼を申し上げます。

本日はどうも皆様ありがとうございました。