【寄稿】おしゃれと共用品

星川 安之さん 公益財団法人共用品推進機構 専務理事

「共用品」とは誰もが使いやすい製品のことです。星川さんは、そのような「共用品」の推進を行っています。本記事では、靴や帽子、水泳帽など衣服の分野に広がる共用品の事例を通して、おしゃれについて、楽しさと機能性が共存するデザインの可能性についてご寄稿いただきました。


「共用品」は、1991年4月に日本で生まれた言葉で、広辞苑には「障害の有無や身体的特性に関わりなく誰もが使いやすい製品」と語釈されています。私が所属する共用品推進機構は、共用品を普及するための公益財団法人で、次の事業を行っています。

1.障害のある人(以下障害者)及び高齢者の日常生活におけるニーズ調査 2.ニーズ調査で 明らかになった課題を解決するための検討 3.使用者、供給者、中立者で検討し、合意となった解決案の標準化(日本産業規格=JIS、国際規格=IS)の作成 4.展示会の開催、データベースの作成、機関誌の発行、講座・シンポジウム等を通じた普及活動

あらゆる分野に増えている共⽤品


「誰もが使いやすい」実現例も

代表的な共⽤品の⼀つに包装容器があります。髪を洗う時に⽬をつむる多くの⼈と、⽬の不⾃由な⼈にとって識別しづらい「シャンプーとリンス容器」には、現在シャンプー容器の側⾯と上部にギザギザが付き、その課題が解決されています。

電⾞・バス内での⾳声によるアナウンスは視覚に障害のある⼈に、電光掲⽰版での表⽰は聴覚に障害のある⼈に情報を伝える役⽬を果たしており「共⽤サービス」と称しています。

共用品はあらゆる分野に増えていますが、衣の分野にもあります。徳武産業株式会社は「高齢者がころびにくい靴」を目指し、2年間の調査・研究を繰り返し「あゆみシューズ」を誕生させました。その2年間で、左右の足のサイズが違う人(写真1.左右のサイズが異なっても1セット あゆみシューズ)、左右で足の長さが違う人、麻痺した手が右か左かでマジックテープの方向を変えた方が良い人などがいることを知り、より多くの人用の汎用版と共に、少数派の人たちにも合わせることができる仕組みを作り、「誰もが使いやすい」を実現したのです。

左が大きく、右が小さい、左右でサイズの違うピンク色の靴
写真1

札幌にある「株式会社特殊衣料」には、てんかんのある女児のお母さんから、「転倒した時に頭を守るおしゃれで安全な帽子を作ってほしい」とのリクエストが届きました。それまでは外出する度に他人の目が気になる「ごついヘッドギアタイプ」のものしかありませんでした。技術的な検討と共にデザインにも力を入れ、おしゃれな安全帽が誕生したのです。(写真2 てんかんの子どもために開発された帽子)

北海道では、冬、大量の雪が降り、歩道も凍り、転倒する人が増えてしまいます。同社は、道路で転倒してしまった時、この帽子をかぶっていたら大きな怪我にならずにすむと考え販売したところ、大きな需要につながりました。

ツバのついた水色の安全帽を被る男児の写真
写真2

おむつカバーメーカーからシェア7割の水泳帽メーカーに

フットマーク株式会社は、水泳帽のシェアを7割以上あるメーカーで、元は赤ちゃんのおむつカバーを作っていた会社です。当時おむつカバーは、赤ちゃん用しか作っていませんでしたが、近所の人に頼まれ高齢者用のおむつカバーを作ったところ好評だったため、販売を開始しました。商品名を「高齢者用」「医療用」など考えましたが、しっくりきませんでした。

その時に活躍したのが広辞苑でした。ページをめくっていくと「介助」と「看護」の単語に心が留まりました。そしてこの言葉を一つにして産まれたのが「介護」という言葉です。この原稿のテーマである「おしゃれ」は、製品・サービスだけでなく「商品名」も対象となることが分かります。

その後、フットマークは、「おむつ」から「おつむ」に主力商品を移し、水泳帽では日本一のシェアをしめるにいたっています。私がその中でも感心した商品は、いろいろな動物の絵柄になっている水泳帽(写真3 動物の水泳帽 フットマーク)です。これは、水を怖がる子どもでも、他の人がかぶっている動物の帽子を見て、水が怖いものではないことを伝えるツールになっているのです。

可愛らしいライオンなどの動物の顔の絵柄が前面に付いている、子ども用の水泳帽
写真3

広辞苑で「おしゃれ」とひくと「⾝なりや化粧を気のきいたものにつとめること。また、つとめる⼈」とありますが、私はそれに加えて下記を語釈にいれたらどうかと思っています。

「選択できる」「違いを、無理なく、認め合う」「他⼈が(も)、楽しい気持ちになる」「⾃分が(も)、楽しい気持ちになる」。

みなさんは、「おしゃれ」をどう定義されますか?