【寄稿】衣服に求める安心・安全・心地よさ、そしておしゃれ感覚

島田療育センター

島田療育センターでは、重度の知的障害と重度の肢体不自由の両方がある方が、状態や年齢、性別に合わせて日々の生活を送っています。島田療育センターでは、利用者一人一人の身体的特徴や好みに寄り添いながら、機能性とデザイン性を両立させた衣服への取り組みを実践しています。

本記事では、日々の暮らしを彩る衣服と布製品の工夫や、出張販売の取り組みやそこでの気づきについてご寄稿いただきました。


はじめまして・・・

島田療育センター(以下、島田)は重度の知的障害と重度の肢体不自由を併せ持つ利用者233名が、障害の程度・医療度・年齢・性別等を考慮し6つのエリアに分かれて生活している施設です。

利用者にとっては一生涯を暮らす大切な場でもあります。

島田療育センターの建物の前の満開に咲いた1本の桜の写真

1.利用者の生活を豊かに彩るために心がけていること

島田には医療・介護・リハビリテーション・日中活動などさまざまな生活支援が用意されています。しかし、決して十分ではありません。利用者にとって、制約や不便さを感じる時もあるはずです。

繰り返し続いていく日々が心身ともに健やかに保たれていくよう個別性に配慮しながら、衣食住・楽しみな出来事・人との関わりなども含めて、バランスの保たれた生活づくりを大切にしています。

※衣服を選ぶ際には利用者に多く見られる身体的特徴を考慮しています。


身体が細く小さい・骨がもろく骨折しやすい(骨粗鬆症<こつそしょうしょう>)・関節を動かせる範囲が狭い(拘縮<こうしゅく>)


呼吸のために気管切開をしている・体温調節が難しい(冷えやすい・熱がこもりやすい)
脚(足)がむくみやすい(浮腫<ふしゅ>)・皮膚が弱い・経管栄養のチューブがある(胃ろう・腸ろう)


車椅子に座ったりフロアやベッドに横になったりして過ごす・口元から唾液が流れやすい(流涎<りゅうえん>)など。

2.布小物・ファブリック

カーテン・ベッドサイドレールカバー・ポジショニングマットカバー、車椅子のヘッドレストカバーやカットテーブルカバー、リラックスするために必要なひんやりグッズ、お出かけ時に必要な帽子やバッグ・襟(えり)仕様の大人用スタイ(写真A)、指ミトン(写真B)、防水バンダナ(写真C)・ひざ掛けなど、生活の中には衣服以外にも、さまざまな布製アイテムが存在しています。生地の色彩や柄をどう選ぶかによって室内空間の雰囲気にも影響しますし、利用者の好みや年齢を考慮した色柄選びの視点も重要です。

仰向けに寝ている状態で、大人用の白いスタイを着用している様子

写真A.襟(えり)仕様の大人用スタイ

①襟(えり)スタイ

肌(顔)に優しい綿素材にし、ベージュのタオル地にオフホワイトのレース生地を表前面に合わせています。「唾液を吸い取る襟(えり)」という目的に加え、「おしゃれな付け襟(えり)」という印象を大切にしています。

また、首元に載せて肩部分を身体の下に挟み込みますので留め具は不要です。ヘッドレストカバーは、車椅子に近いベージュの3枚重ねガーゼ、3辺のみ綿素材で焦げ茶色のレースを挟んでいます。車椅子本体とヘッドレストの色にマッチするようにしています。

②指ミトン

利用者の意思とは無関係(不随意<ふずいい>運動)に、自分の顔や身体に傷(擦過傷<さっかしょう>)を作ってしまうことを防ぐ目的で装着します。手をすべて覆うのではなく動きのある指だけにすることで、手の不快感を最小限にする工夫をしています。そして安全のためだけに「覆う」のではなく、あえてその部分をおしゃれポイントとして楽しめる色彩や絵柄をモチーフに生地選びをしています。

右手の人差し指にパンダの絵の描かれた白いミトンを装着している様子
花柄や猫などが描かれた色鮮やかな、4個の、指につけるミトンの写真

写真B.指ミトン

③防水バンダナ

流れ出る唾液(流涎<りゅうえん>)を吸収するためにバンダナを使っています。バンダナの裏地には、衣服を濡らすことなく快適さを持続するよう防水機能のある布(ラバー素材)を使い機能性を高めています。

バンダナはエプロンやスタイと使う目的は同じでも、胸元がスッキリとおしゃれに整って、普段の生活や外出時にも手軽にファッションを楽しむことができる便利アイテムです。衣服と共布にしたり、差し色にしたりするなどコーディネートも楽しむことができます。

白地にピンクの柄のあるバンダナを首に巻いている様子

写真C.防水バンダナ

3.衣服

衣服には、身体を包み保護することや体温調節のためなどの基本的な役割があります。島田では、①着替え(更衣)をする際に関節に負担が掛からないもの ②姿勢(先述の身体的特徴)によって不都合や窮屈さが生じないもの ③色落ちや縮みなど洗濯トラブルに不安のないもの、などが必須条件となり、どうしても機能性重視になりやすいのが現状です。しかし、着たい衣服を利用者本人が決めるなど、好みのものを選ぶことも生活の中での楽しみづくりの一助となり、自分を表現する場ともなります。

利用者の希望やご家族の思いの中にある個別性に合わせ、有効的なおしゃれを取り込むことを大切にしています。

①ベスト仕様の氷枕ウエア

常時、身体的な動きがあると、発熱時に安静を保つことや通常の氷枕使用が難しくなります。 ベスト仕様にして後ろ身頃の背中にアイスノンを出し入れできるポケット(マジックテープ付)を作り、また、気管切開の有無に関わらず着用できるように襟ぐりを深めにとっています。

前面にファスナーが付いた襟ぐりが深めの、星柄模様のついた深緑色のベスト
背面にマジックテープ付きのポケットが付いた星柄模様のついた深緑色のベスト

写真.ベスト仕様の氷枕ウエア

②オーダーメイドの1着

気管支に管を付けている方が、襟ぐりが深いブラウスとベストを着て仰向けに寝ている様子
襟ぐりが深いピンクのブラウス

写真D.「襟」気管切開の位置から下げて前開きにしています。

袖に開閉するためのたスナップボタンの付いたピンクのブラウスの左袖の写真

写真E.「袖」凹凸が少なく留めやすいスナップボタンにしています。

着脱の際に負担なく、腕の状態もしっかりと確認することができます。

左右で長さの違うズボンを履いて、仰向けに寝ている様子

写真F.「丈」左右の腕・脚の⻑さに合わせた⼨法で、
もたつかずスッキリと着⽤することができます。

脇と肩の部分がスナップボタンで開閉できるように改良したベスト
仰向けに寝ている状態で、ブラウスがお尻のあたりまで覆っている様子

写真G.「⾝頃」ベストの脇と肩はスナップボタン留め、
裾左右のスリットで⾐服圧を軽減しています。
ブラウスの後ろ⾝頃の丈を⻑めにして、
背中やお尻まわりを優しくカバーしています。

<素材>

骨密度が低く関節の曲げ伸ばしに痛みを伴いやすいため「伸びる素材」を、また敏感肌で汗により肌荒れしやすく湿疹もできやすいため「肌に優しく吸水性に優れた素材」を使用しています。

<配慮点>

  • 周囲から声がかかると本人の表情の変化を引き出せるため、話題を作りやすいファッション性のあるデザインを取り入れます。
  • 顔色(肌色)や雰囲気に合うカラーコーディネートを大切にしています。
  • 車椅子やベッド生活では、どちらかと言えば上半身の印象が強くなり、写真Dのように胸元で人工呼吸器の管(くだ)が結構目立ってしまいます。

印象を和らげる案として「衣服にコーディネートされたカバー」などはいかがでしょうか?

リフォームの1着

気管切開をしている利用者にとって頭からかぶる衣服はリスクが伴うため、前開きの衣服着用しています。加えて、身体の緊張が強く前開きでさえ腕の出し入れなど上衣の着脱が大変になってきている利用者には、購入した既製品の半袖・前開きシャツ(写真H)をリフォームしました。

現在のみならず、今後に予想される身体的な変化(左腕の拘縮の進行)を見据え、前開きは残しながら、襟~左袖までを全て開きました。着脱時の骨折リスクを大きく軽減する安全で心地よい衣服になりました。

トルソーに着せた半袖のチェック柄のシャツ
左側の襟から袖にかけて開閉することできる半袖のチェック柄のシャツの写真。開閉できる部分は全て閉じている状態です。
左側の襟から袖にかけて開閉することできる半袖のチェック柄のシャツの、襟から肩の部分を開けている様子
左側の襟から袖にかけて開閉することできる半袖のチェック柄のシャツの開閉部分を全て開けている様子

写真H

4.出張販売“ふくまる”さんが島田にやってきた~選んで購入できる喜び

以前は地域への外出時に、利用者が自分で衣類を選んで購入する機会がありました。しかし、感染症流行や利用者の体力面などさまざまな事情により、現在はその機会がなくなってしまいました。安心・安全に無理なく買い物を楽しむことができるように、島田に洋服屋さんの特設会場を作りました。利用者はそれぞれのペースで衣服を手に取り、素材を確認したり合わせた服を姿見で確認したりしていました。

たくさんの服や帽子が展示され、それらを車いす利用者などが閲覧している様子
紺色の帽子の試着をする車いすに座る女性と横に立つ女性の写真
女性が手に持った長袖のボーダーのTシャツとウグイス色のトレーナーを、車いす利用者が選んでいる様子
たくさんのブラウスやジャケットが展示された会場で、それらの衣類を選んでいる人々の様子

①新たな気づき

離れて暮らしている家族には、今の利用者に必要な衣服の素材やサイズ・デザインをイメージすることが簡単ではありません。また利用者が家族と一緒に買い物をすることも難しい現実があります。そして、職員が買い物代行をする場合には、利用者の雰囲気や年齢を考慮しつつも、結果として職員の視点で衣服を選んでいたのかもしれません。

今回、一緒に買い物をしてみると、利用者の好みや選びたい意思があることにあらためて気づくことができました。利用者が自分で衣服を選んで購入する…そこに生まれる充実感や喜びを共有し、その思いを大切にしなければと感じています。

②今後に向けて

事前に出張販売業者へサイズや色合い・素材や質感などを具体的に伝え、利用者が選択・購入しやすい品揃えをお願いしたいと考えています。また、購入した衣服のお直し(ズボン丈や部分的なリフォームなど)もその場で相談・依頼できると、より一般的なお店に近い感覚で利用できるのではないかと思います。出張販売との連携で、同じブースに「お直しの相談・受注コーナー」がほしいと考えています。

今回は衣服を中心にしたお買い物でしたが、肌着や装飾小物なども含めて「自分の身につけるものは自分で選びたい」がかなえられると、日々の生活が更に明るく楽しく、心地よいものになるのでは、と感じます。朝、今日の気分で身につけたいものを身につける…そのようなあたりまえの日常を丁寧に整えたいと思います。

5.衣服環境の充実

①発想豊かな靴

一般的に靴に求める機能としては、足元の保護はもちろんのこと、履きやすさと脱ぎやすさ・履き心地・歩きやすさ・歩く際の安全性・安定感の確保・耐久性があります。さらに、素材・色合い・デザイン・好みの装飾・価格・使用場所や用途によって、1足の靴に絞り込まれていきます。

利用者へと視野を広げて考えると、一般の使用目的とは異なり、「歩行しない靴」の有用性が見えてきます。足部の保護はもちろんのこと、素材や色合い・デザインにもこだわった唯一無二のオーダー靴です。

また左右のサイズが違ったり、足全体が変形したり足の関節が拘縮(こうしゅく)していると、脱着にもリスクが伴いますし、車椅子のタイプによっては足底(靴底)が下方を向くとは限りません。身体的な特徴や生活スタイルに、利用者・家族の希望や遊び心を加えて、身にまとうものの個性の表現の一つとしてのオーダー靴です。商品開発を待ち望んでいます。

甲の部分がピンク、ソールの部分が緑色と白色で、かかとのないニット素材の靴を、仰向けに寝た状態で履いている様子
甲の部分がピンク、ソールの部分が緑色と白色で、かかとのないニット素材の靴の横側と底面の写真

②ユニバーサルファッション

既製服の購入時は選択肢が限定されてしまい、既製服での対応が難しい利用者にとっては、セミオーダー服(既製服をプチリフォーム)~フルオーダー服まで、身体面・好み・年齢などの個別性と、TPOに合わせたおしゃれ度の高い衣服の普及は急ぎかなえたい課題です。

視覚的な工夫はもちろんのこと、着替えがスムーズで苦痛にならないデザイン性の豊富さ・デリケートな皮膚の状態や体温調節機能に配慮した素材であることに加えて、伸縮性の有無も大切なポイントになっています。そして日常着・外出着・人生のセレモニーに着る衣装など、さまざまなシーンで利用者の望みや思いをかなえる衣服・多くの機能とファッション性を兼ね備えた衣服の必要性が高まっています。

【利用者の衣服に関する困りごと】

  • 既製品のズボンは股上が浅く、特にチノパンツやジーパンはお尻部分がタイトな縫製が多いので大人用紙おむつが見えてしまいます。また、デザインで選ぶとベルト通しのあるものが多く、ひも調整のあるタイプはスウェットを選ばざるを得ない状況です。
  • 柔らかな生地で伸縮性のある前開きシャツがほとんどありません。
  • かぶりの⾐服の場合、⾝体的な状況から着脱しづらくなってきています。
  • 着丈(⼤⼈サイズ)に合わせると肩幅や襟ぐりが合いません(肩幅が狭い)。
  • 背中に熱がこもりやすく⼿⾜(末梢<まっしょう>)は冷えやすいので、⾐服のすべてが同じ素材ではなく部位別の特徴に合わせた仕様になっているとうれしいです。
  • 胃ろう部に服の布地が引っ掛かることが困ります。
  • 男性用襟(えり)付きシャツは綿素材が多く、伸びが悪いものが多いです(特に冬用のネルシャツ等)。
  • 襟(えり)付きシャツはデザインも同じようなものが多くなりがちで、バリエーションがとぼしいです。

【今後に期待していること】

  • お腹まですっぽり履けて、柔らかい素材で締め付けが少ないズボンがあるといいです。成⼈でおむつ着⽤の⽅向けに、ヒップラインがスッキリ⾒えて、尚且つ履き⼼地の良い⽣地やデザインのズボンが良いです。
  • 身体的特徴に合わせた、成人式用のドレスなどがあると良いです。
  • 上半身と下半身や左と右など、非対称な身体的特徴(体型)にも程よくフィットするサイズ感がかなえられるとうれしいです。
  • 汗を吸い取りやすい、吸水性の高いものが良いです。
  • 肌に優しい素材がうれしいです(かつ、洗濯でしわにならずごわつかない素材)。
  • 不随意(ふずいい)運動で首を振っても、ズレたり脱げにくい帽子がほしいです。
  • 冬用の衣類として、トレーナー地の前開きがあると良いです。

【その他、衣服関係で常日頃思っていること】

  • 感染予防の観点で外部業者に洗濯を依頼している場合、素材によっては業務用の強い消毒・漂白剤、高温乾燥に耐えられず、色褪(いろあ)せ・劣化・しわ・ごわつき・縮み(サイズが変わる)が出てしまうことがあります。また小さなボタンは、洗濯時に破損したり外れて紛失したりするリスクが多く見受けられています。衣服そのものの問題だけでなく、洗剤や洗濯機器・システム等ともタッグを組みトータルな視点での商品開発を願っています。
  • 気管切開しカニューレ装着のある方にとって、前開きシャツ(ブラウス)一択にならざるを得ません。前開きトレーナーなど衣服の選択肢が増えるとうれしいです。
  • 利用者は、一般的な成人よりも小柄で、ジャストサイズの衣服は子供用になってしまいます。成人のデザインでサイズが幅広く展開されていると助かります。
  • ストレッチャータイプの車椅子ユーザー(座位姿勢ではなく仰臥位<ぎょうがい>など)向けに、かけるだけで簡単にスーツやドレス気分を楽しむことができる「イベント衣服」がほしいです。

おわりに

現在、島田には衣類の作製・リフォームなどでご協力いただいている皆様がいます。着脱のしやすさや着心地はもちろん、好みのデザインなども相談しながら個別性に配慮した衣服の作製を可能にするリソース(連携先)がある…とても恵まれた状況です。

新しく購入した既製服だけでなく、利用者の手元にある大好きな衣服やお似合いの衣服・思い出の衣服なども含めて、「前開きにしたい・袖ぐりにゆとりを持たせたい・身幅を広げたい・背中にギャザーを入れたい・袖丈を調節したい」…など、既製服ではどこかあきらめていた部分を一人ひとりに合わせてリフォームすることの大切さや豊かさを実感しています。

これからも快適な衣服を1着でも多く利用者に届けられますように!

また、私達も含めて必要とするすべての人々に、手立ての情報が発信されますように!

衣服に関する相談・作製にご協力いただいています。

  • 山野美容芸術短期大学 大野 淑子様(東京都)
  • 株式会社リラ・ヴォーグ  張替  梅茱様(東京都)
  • はんどわーく布恋⼈(ふれんど)  三野江津⼦様(神奈川県)
  • 島⽥お裁縫ボランティアグループの皆様
  • 島⽥裁縫室

⾐服の訪問販売をお願いしています。

  • 衣類・お菓子等 出張販売 ふくまる様(埼玉県)

(文責/島田療育センター療育部)