【寄稿】視覚障害者の服選び
山岸 加奈子さん 一般社団法人日本ケアメイク協会 理事長
山岸さんは、トロンボーンを演奏して音楽活動をする音楽家です。全盲の視覚障害があり、視覚障害のある方が鏡を見ずにメイクをする「ブラインドメイク」を普及する活動をされています。
本記事では、視覚に頼らずに行う洋服の管理やコーディネートの工夫、色や柄を確認するための機器やアプリの活用をご寄稿いただきました。ステージ衣装や日常着の選び方、洋服やメイクがもたらす気持ちの変化についても語られています。
みなさんは、服の色や模様など、目で見て判断していると思います。でも、目が見えない場合、どうやって洋服を買っているのか、どうやって毎日の服選びをしているのか、想像したことはありますか?
私自身、まったく見えない全盲です。でも昔は色を見ることができました。視神経の萎縮で、大学を卒業したころから全盲になりました。「赤」と言われれば、具体的に頭で赤い色を想像することができます。
生まれつき全盲の人は、色を具体的に色として想像するのではなく、知識としてのイメージで持っているようです。
■ 服の管理
洋服を購入する時は、一番私のことを理解していて、ファッションセンスも抜群な母を信頼して、一緒にお店で選んでもらっています。この形のセーターはピンク、この形のブラウスは白地に青の花柄など、形で色や柄を覚えておくようにしています。でも、衣替えをして久々に手に取る洋服は、何色だったかすっかり忘れてしまっていることもあります。 そういう場合は、いろいろな道具を使って色や柄を確認したりもします。
■ 色や柄を知る便利グッズ
色だけを知りたい場合は、カラートークという機械の登場です。服に直接カラートークのセンサー部分を当ててボタンを押すと、色をしゃべってくれるのです。「濃い青」とか、「淡いピンク」など、だいたいの色を知ることができます。
この服は柄物だったかな?どんな形でどんな色の柄だったかな?というように、色以外の情報を知りたい時は、スマートホンのカメラを向けることで、詳細に説明してくれるというアプリもあります。これにより、上下違う柄物を着てしまうということもなくなりますね。
モノタグというものを洋服に縫い付けて、そのタグに自分の声で録音したデータを登録しておけば、タグに専用の機械を当てることで、録音したものを再生できます。例えば、「白に黒のドット柄のブラウス。黒いパンツやブルー系のスカートと合わせて着ると良い。」などというように録音しておくのです。
■ 洋服の力
私はトロンボーンという楽器のソリストをしています。ステージに立つ時は、ステージ用の衣装を着ます。日常の洋服なら、持っている服の中から自分で選ぶことができますが、ステージとなれば話は違います。衣装担当の方や母に、普段と違う斬新なデザインやスタイリッシュなものを選んでもらいます。いつもと違うイメージの洋服を着るだけで、気持ちも上がるし、ステージでの自分の表現力も変わるような気がします。
家に帰ってリラックスウェアに着替えるだけで、気持ちがリラックスモードに切り替わるように、洋服には不思議な力があると思います。

■ 見えなくてもお化粧をしておしゃれしたい!
洋服だけでなく、お化粧にも同じような力があります。私は演奏活動の傍ら、鏡を見ずにお化粧をする技法「ブラインドメイク」を広げる活動もしています。見えなくても、自分の手や指を使って、きれいにお化粧ができるのです。

お化粧がきれいにできると、おしゃれしたくなる。おしゃれな洋服を着るとお化粧したくなる。おしゃれをしてきれいにメイクをした自分を見ることはできないけれど、心でイメージたり、周囲からほめられたりすると、本当にうれしいものです。
視覚障害者でもおしゃれ好きな人はたくさんいます。でももちろん失敗もあるかもしれません。シャツを裏返しに着てしまう。靴下の左右の色が違う。とても目立つシミがついている。など・・・
そんな時は、様子を見てさりげなくこっそり教えてあげることも親切なことだと思います。自分らしく自由におしゃれを楽しみたいと思う気持ちは、視覚障害者も同じなのです。

