【寄稿】メディア主催者が⾒る「障がい者×ファッション」の変遷
遠藤 久憲さん NPO法人施無畏 代表理事
遠藤さんは、メディアの主催者として、「障がい者×ファッション」に関わる雑誌『Co-Co Life』やフリーペーパー『Co-Co Life☆女子部』の発刊や活動に関わっています。
本記事では、遠藤さんが、これまでの活動や経験を通して見えてきた「障がい者×ファッション」のこれまでの変化と課題、そしてファッションが「誰もが楽しめるもの」になるための未来への展望をご寄稿いただきました。
NPO施無畏の代表をしております遠藤久憲です。⻑年、「Co-Co Life」の媒体名で、障がい者向けメディアを発⾏してきました。そんな経歴のわたしが、メディア主催者視点で「障がい者×ファッション」を振り返り、今後の展望を述べたいと思います。
「障がい者×ファッション」が注⽬されなかった時代
オシャレすること⾃体がタブーな雰囲気
わたしが最初に障がい者向けマガジン「Co-Co Life」の発⾏に関わったのが2007年。このころは、「障がい者×ファッション」が注⽬されることはなく、障がい者がファッションを楽しむこと⾃体がタブーのような雰囲気さえありました。
Co-Co Life は「障がい当事者に⼀歩踏み出すきっかけを提供する」がコンセプトのメディアでした。わたしはずっと⼥性向けのメディアをやっていて、⼥性のアクション喚起にファッションが⼀つの⼤きな要素であることを肌で感じていました。でも当時、障がい者ファッションのメディア掲載事例は⾒つけられませんでした。
しかし、取材対象の障がい当事者と話をするうちに、ファッションを楽しみたいという当事者はけっこういました。なんとか、「障がい者×ファッション」を⼀般化したい。この状況を受けて、当時のわたしの夢は「いつか東京ガールズコレクションの舞台に⾞いすモデルを」でした。
夢へ近づくために、メディアができることとして、今から15年前の2010年、Co-Co Lifevol.12で「Co-Co Life Fashion Collection 2010」というファッション特集を組みました。障がいのある読者モデル21 名に参加してもらい、ヘアメイクとスタイリストをつけ、ハウススタジオで、プロカメラマンによる撮影を敢⾏しました。


障がい者モデルを起⽤して、⼀般ファッション誌並みのクオリティーで画期的だった。
この特集は障がい当事者に「わたしたちもファッションを楽しめるんだ」という勇気を与え、福祉業界やメディアに対する強いインパクトになったと⾃負しています。Co-Co Lifeが障がい当事者がファッションを楽しむことに先鞭をつけたと。
「障がい者×ファッション」初期
“障がい者もオシャレを”が⼀般化
障がい者ファッションに先鞭をつけたマガジン「Co-Co Life」は、資⾦難のため残念ながら2011年に休刊。しかし、vol.12の「Co-Co Life Fashion Collection 2010」でモデルをつとめた障がい⼥性たちが、熱烈に復刊を希望。モデルたちがマガジンの作り⼿となって、2012年にフリーマガジン「Co-Co Life☆⼥⼦部」が創刊されました。
元々モデルを希望するくらいオシャレ感度の⾼い障がい⼥性たちがつくるマガジン。創刊号の第1特集は「オシャレの決め⼿は やっぱり『⽬⼒』!?」。第2特集は「秋美⼈ヘアは⾃分で作れる!かんたん×カワイイ=Workshop」という内容でした。
障がい当事者が制作に関わるファッションマガジンというキャッチーさにより、「Co-Co Life☆⼥⼦部」はNHK はじめ各種メディアに取り上げられて注⽬をあびました。また、ちょうどSNS時代の幕開けタイミングとも重なり、Co-Co Lifeがしかけた「障がい者もオシャレを」は⼀気にメジャーとなりました。

「障がい者×ファッション」中期
既製服お直しと、オリジナル開発の2軸が芽吹く
2010 年代の障がい者向けファッションアイテムは、既製品のお直しと、オリジナル開発の2軸で展開されていました。
洋服に関していえば、Co-Co Life☆⼥⼦部でも「リフォーム美⼈物語」という連載を展開していた通り、既製服お直しの流れがありました。「リフォーム美⼈物語」はイオングループの「マジックミシン」が提供。マジックミシンのような全国展開店舗以外でも、各個店で⾝体の状態に合わせたお直しが⾏われていました。障がい当事者の既製品お直しというと、それまでは当事者の家族が担うケースが多かったのですが、やっとマーケットになりつつある感じでした。

障がい者向けファッションアイテムのもう1つの流れはオリジナル開発です。⾐服では着やすさを追求した姿⾒。肌に優しい素材。医療ケアを想定した⾐服などがチャレンジされていました。しかしながら、どうしても個⼈の障がい状況による部分が⼤きく、多くの⼈に⽀持されるという部分ではハードルがありました。
⾐服以外のところでは、バッグや靴のオリジナル開発が、参⼊者が多かった印象があります。この時期、メディア⼈としては、国際福祉機器展(HCR)で、障害者向けバッグなど新しいチャレンジャーを探していました。
障がいがあってもファッションを楽しむ!「バリコレ」で⼀般化
2010年4⽉にNHK Eテレで「バリバラ」が始まりました。挑戦的な番組で、それまでの障がい者イメージを変えていきました。Co-Co Life☆⼥⼦部は出演者紹介などで、バリバラと協業していました。そのバリバラが2016 年に六本⽊ヒルズで、「バリコレ」という名前の障がい者ファッションショーをやることになりました。Co-Co Life☆⼥⼦部は出演を打診され、さまざまな障がい当事者20⼈をショーモデルとしてアサインして、チームとして出場しました。
モデル始め、⾐装提供、裏⽅とたくさんの⼈がショーに関わり盛り上がったのを⾒て、障がいがあってもファッションも楽しむが⼀般化したなとバリコレを通して思いました。


詳しくはCo-Co Life☆⼥⼦部公式ホームページで。
NHK「バリコレ2016」ファッションショーに、「Co-Co Life☆女子部」が出演!
https://co-co.ne.jp/?p=4141
「Co-Co Life☆女子部」バリコレモデル達をご紹介します!
https://co-co.ne.jp/?p=4179
Co-Co Life☆⼥⼦部でもオリジナル⾞いす⽤バッグ開発
ファッションマガジンイメージが強いCo-Co Life☆⼥⼦部は、バッグメーカーと協業して、2017 年に⾞いす⽤バッグを開発販売。徹底的に⾞いすユーザーの読者にヒアリングして完成させたバッグで、機能性とオシャレさを兼ね備えた画期的なバッグと今でも思っています。



ショルダーにも、⾞いすの後ろにも取り付けられる仕様
実はこの⾞いす⽤バッグ開発において、1つの気づきがありました。徹底的に⾞いすユーザーに使いやすいバッグを訴求したのですが、実はベビーカーユーザーにも使いやすかったのです。まさに、「誰かに使いやすいを追求した結果、ユニバーサルな広がりに発展する」事例でした。


より使いやすさとオシャレ感を追求。ADOMの詳細は、
https://adomgoods.thebase.in/
この時期、いくつかの障がい者向けファッションアイテムを取材してきましたが、いくつか問題点もあります。⼀番の課題は「収⽀がとれない」こと。製品としてすぐれているものはたくさんありました。ただ、なかなか収⽀がとれない。収⽀がとれないから続かないという事例をたくさん⾒てきました。我々が開発した⾞いすバッグも収⽀的には厳しいものでした。
「障がい者×ファッション」円熟期
単に障がい者向けでなく、よりユニバーサルに
2020 年代に⼊り「障がい者×ファッション」は円熟期を迎えた感があります。さまざまな分野の⼈が障がい者ファッションに参⼊し、メディアCo-Co Life☆⼥⼦部としては、取り上げたい事例がたくさんでてきました。
既製服お直しの流れで、紹介したいのが『キヤスク』のリフォームサービス。以前⾃分の⼦どものために⾐服をリフォームしていたお⺟さんたちが、その経験を⽣かし、キャストとして「お直し」を担当するビジネスモデルです(キャストの約7割が障がい児のお⺟さん)。⾃分の⼦どものためのスキルが標準化され、他者の役に⽴つという成熟したスキームが感じられる事例です。
⾞いすモデルとしては、バリコレや、Co-Co Life☆⼥⼦部オリジナルバッグのモデルをつとめた葦原海(あしはら・みゅう)さんが、2022 年に「ミラノ・コレクション」、2023 年には「パリ・コレクション」の舞台に⽴ちました。かつて、わたしは、障がい者モデルが東京ガールズコレクションに採⽤されることを夢⾒ていましたが、葦原海さんの活躍はその上をいくものとなりました。
また、2023年の国際福祉機器展で⾏われたファッションショー「NextUD JAPAN 2023」は⾮常にレベルの⾼いものでした。
今回、ご縁があって、国⽴障害者リハビリテーションセンターのインクルーシブファッションサイト⽴ち上げのお⼿伝いをさせていただきました。このサイトに掲載されている事例に接するにつけ、「障がい者×ファッション」は円熟期を迎えた感を強くしました。
障がい者が着やすく、ケアしやすくを追求していったら、⼀般の⼈にも魅⼒的なファッションになっている「誰かに使いやすいを追求した結果、ユニバーサルな広がりに発展する」事例もたくさん⾒受けられました。どんどんこの流れを突き詰めていってほしいと思います。良いものは確実にできています。その取り組みが事業として成り⽴ち、継続してファンションを提供できるようになることを願ってやみません。
わたし⾃⾝もメディア⼈として、今後もこのような好事例をたくさん取材して、オシャレを求める読者に発信していきたいと考えています。
