【寄稿】ファッションの垣根を超える――誰もが輝ける服づくりを目指して
中藤 友栄さん こうのふく 代表
中藤さんは、家族の介護経験をきっかけに、着替えが困難な方のための衣服を提案する「こうのふく」を立ち上げました。本記事では、機能性と見た目の両立を目指して開発した「お好みシャツ」や、オーダーメイド対応の工夫についてご寄稿いただきました。服づくりを通して、一人ひとりの生活や希望に寄り添う姿勢が語られています。
はじめに
あなたにとって、服とはどんなものでしょうか?
身体を守り、暑さや寒さをしのぐもの。
それも大事なことですが、それだけではないでしょう。
服は自分らしさを表現し、日々の暮らしを彩るものです。「こうのふく」は、すべての人が快適でおしゃれを楽しめる服作りを目指しています。着替えが困難な人のための特別な機能を持ちながらも、きれいな色とやさしい素材を備えた服は、生活の質を高めて自分らしく輝くためのツールなのです。
活動のきっかけ
この活動を始めたのは、私自身が家族の介護を経験したことがきっかけです。次男は2歳の時に急な病気で、同じ時期に父も認知症が原因で寝たきりになりました。


二人の介護に関わる中で「介護靴の売り場はあるのに、介護服の売り場がない」という問題に気づきました。また、介護が必要な方の服は、パジャマ以外の選択肢がほとんどない状況にも疑問を持ちました。世の中には、こんなにたくさん服があるのに、次男も父も、自分らしい服を選べないことは不公平だと思い、活動をスタートしたのです。
課題と解決への挑戦
活動していく中で、着替えが困難な人は、お一人おひとり困り事が違うことがわかりました。 それぞれのニーズにこたえるためには、何種類ものデザインが必要であることが課題になりました。着替えやすさを優先することで、見た目を損なうことのないように工夫する必要もありました。
何度も試行錯誤を繰り返した結果、袖の開閉機能があり留め具を選べる「お好みシャツ」を開発しました。見た目は普通のシャツのようでありながら、着る人の好みやお身体の状態・生活環境に合わせてカスタマイズすることができます。


自社開発の上質なガーゼ生地を使用していますので、暑さや寒さを感じやすい人にも「とても気持ちが良いですね」と、喜んでいただいています。ご予算に応じてオーダーメイドやリフォームも対応し、さまざまなご相談をいただくようになりました。
着替えやすくすることでお世話する方の負担が軽くなりますが、時には着る人のリハビリのために「自分でできる」機能をご提案することもあります。
決まった形の服をたくさん作って選んでもらうのではなく、服のほうが着る人に合わせていくことで、一着の服を長く大事に着てほしいと思っています。
未来に向けて
私が今一番問題だと思っているのは、このような機能的な衣服を作る企業や人がいても、その情報が必要な方に届いていないことです。そこで、年齢・性別・体型・そして身体の状態に関わらず、誰でも快適に着用できる服を2025年春発売します。
カスタマイズできる「お好みシャツ」をさらにスタイリッシュにして、着替えが困難な人も、困難ではない人も、同じ服を着られることを可能にしました。「介護用」「特別」という枠を取り払うことで、洋服売り場で普通に買うことができるようになり、必要な人に「こんな服がある」という情報を届けやすくなると考えています。
この服を通じて「インクルーシブファッション」を広め、すべての⼈が⾃分らしく⽣きられる社会を⽬指しています。今後も改良や新商品の開発を進め、多様なニーズにこたえる取り組みを続けていきます。
【経歴紹介】
中藤友栄(なかとう ともえ)
広島県出身。次男と父の介護経験から、着替えが困難な方々のための機能的でおしゃれな服を提供したいと考え、2018年に「こうのふく」を創業。自社開発のオリジナルガーゼ生地で、着心地とデザイン性を両立させた製品を提供。個々のニーズに合わせたカスタマイズに対応し、一人ひとりに寄り添ったサービスを展開。
2020年度第4回中国地域女性 ビジネスプランコンテストSOERUワークライフシナジー賞受賞。


