【寄稿】次世代のユニバーサルデザイン「NextUD」の視点でファッションを考える挑戦
小川 修史さん 兵庫教育大学大学院学校教育研究科 教授
小川さんは、ユニバーサルファッションに関する研究と実践に取り組んでいます。本記事では、「誰もが楽しめる」ことを重視したNextUD(次世代のユニバーサルデザイン)の考え方についてご寄稿いただきました。障害のある方との対話から生まれた機能とデザインの工夫を通して、多様な人にとっての選択肢となるファッションの在り方を考察しています。
ユニバーサルファッションという言葉をご存知でしょうか?ユニバーサルファッションは「障害の有無、性別、年齢、体型、国籍などに関わらず誰もが楽しめるファッション」を指します。近年、SDGs(持続可能な開発目標)が定められたこともあり、ファッションの世界でもこうしたユニバーサルファッションに注目が集まっています。
私達はユニバーサルファッションの開発を進める中で、着脱のしやすさなど機能性については議論が進む一方で、機能性とオシャレさの両立という点では発展途上である事に着目しました。これらが両立するデザインについて試行錯誤する中で,私達は「NextUD(Next Universal Design:次世代のユニバーサルデザイン)」という考え方にたどり着きました。
NextUDは従来のアクセシビリティ(利用できるかどうか)とユーザビリティ(利用しやすいかどうか)に加え、「エンジョイビリティ(楽しいかどうか)」を強調した概念です。私達は「誰もが楽しめる」ファッションを目指してデザイン開発を進めていきました。

しかし、その過程で「誰もが楽しめる」という部分に疑問が生まれました。誰もが楽しめるということは,同時にファッションの魅力である「個性」が失われる訳です。例えば、身体に障害のある方でも着脱が容易なデザインを開発しようとすると、どうしても「既存のデザインを障害があっても着られる様に改良する」という発想になってしまいがちです。
こうした発想でデザインすると、どうしてもファッションに欠かせない「オシャレさ」が損なわれます。いくら着脱が容易なデザインでも、オシャレでなければ外出するモチベーションが生まれません。これではエンジョイビリティが保障されません。
そこで、目の前にいる特定の人が機能的でオシャレと感じるデザインを開発し、それを多くの人にとっての「選択肢」にしてしまおうという発想が生まれました。例えば、画像の腕の部分のジッパーは、「注射を打つ度に着脱するのが億劫」というALS患者の声を聞いてデザインしたものです。障害のないユーザにとってこのジッパーは不要かもしれません。
しかし,このジッパーを隠すのではなく、敢えてオシャレなアクセントとして強調することで,一般的な発想では生まれないデザインの「選択肢」に変化する訳です。また、ジッパーを使って袖を切り取る、つまり長袖から半袖にチェンジする事もできます。つまり、オシャレさだけでなく、機能面でも多くの人にとってメリットが生まれます。
最初から全てのユーザにとって着脱が容易な究極のユニバーサルデザインを目指すのではなく、特定のユーザ向けに魅力的なデザインを考え、それを汎用的なデザインに改良するという発想で開発することで、新たな「魅力」が生まれたのです。


こうしたNextUDの発想に行き着いたのは、障害のあるユーザとの「対話」でした。対話を重ねる中で、障害のあるユーザが一般社会のコミュニティに合わせるためのデザインを考えるのではなく、自分達のコミュニティの魅力を強調し、多くの人がその魅力に気づくデザインを考えることの大切さに気づいたのです。これこそがファッションの魅力である「個性」、つまりエンジョイビリティが保障された究極のユニバーサルデザインであると私達は考えます。


私達の活動はまだまだ道半ばですが、こうしたNextUDの視点で開発されたデザインの選択肢が世の中に少しでも増えるよう、一歩ずつ前に進みたいと思っておりますので、応援宜しくお願い致します。
詳細はこちら:NextUD LAB.(兵庫教育大学小川修史研究室:https://nextud.site/)

